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「地域と中小企業の金融環境を活性化させる法律案」骨子

私たち中小企業家が望む金融アセスメント法とは(試案)

中小企業家同友会全国協議会

(1)目的

 この法律は、地域と中小企業への円滑な資金供給や不公正な取引慣行の是正などで努力する金融機関の寄与の程度を事後的に評価、格付し、その適切な情報を公開する制度を設けることにより、金融機関の資金配分を地域経済や中小企業に向けさせるとともに、地域住民と中小企業が地域経済の発展に貢献する金融機関を支援・育成することをも促し、もって中小企業の活性化と地域経済及び国民経済の繁栄に資することを目的とする。

(2)基本理念

  1. 地域経済と中小企業を活性化させるために円滑な資金供給を実現し、地方分権の時代にふさわしい豊かな地域経済を支える金融機関を育て、地域への資金の安定的供給をもたらすこと。
  2. 我が国の健全な金融市場の形成に不可欠である公正な競争が維持・促進されるよう、各金融機関において融資に係る一方的かつ不公正な取引慣行の是正をはかるとともに、適正な契約関係の整備や金融機関の取引上での説明責任を果たすことなど取引環境の整備がはかられること。
  3. 地域と中小企業の金融環境を活性化させるうえでの国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、金融機関に関する情報が適切かつ定期的に開示されることにより、利用者による金融機関の選択や意見の反映を容易にし、金融機関の業務の公共性が確保されること。

(3)国及び地方公共団体の責務

 国及び地方公共団体は相互に協力し、基本理念にのっとり、地域と中小企業の金融環境の活性化に関し必要な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(4)金融機関の責務

 金融機関は、基本理念にのっとり、当該金融機関が業務を行っている地域における資金の円滑かつ安定的な供給に資するとともに、金融サービスを必要とする個人、企業、団体その他に対して取引の機会を広くかつ公正に保障し、融資に係る一方的かつ不公正な取引慣行の是正をはかり、適正な契約関係の整備や金融機関の取引上での説明責任を果たすなど利用者の利便の向上を図るように努めなければならない。

(5)地域・中小企業金融活性化評価委員会の設置と権限

1、設置

 都道府県ごとに地域・中小企業金融活性化評価委員会を設置する。その総合的な連絡調整、集約のために地域・中小企業金融活性化評価全国委員会を内閣府の外局として設置する。

2、組織

 委員会は、委員長及び委員6名をもって組織するものとし、地域金融及び地域経済に関し優れた識見及び経験を有する者、地域経済団体及び中小企業経営者等の利用者の代表などによって構成される。委員長及び委員の任命及び任期は都道府県の条例で定める。地域・中小企業金融活性化評価全国委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行い、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命し、任期を三年とする。

3、評価と格付

 委員会は、評価と格付の結果を都道府県知事及び地域・中小企業金融活性化評価全国委員会に報告し、公表する。全国委員会は、報告と格付の結果を内閣総理大臣に報告し、インターネット等で開示する。その際、修正及び付帯意見を付することができる。

4、資料提出の要求等

 委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、日本銀行、預金保険機構又は銀行等に対し、資料の提出、説明その他必要な協力を求めることができる。

5、意見の聴取及び苦情調査

 委員会は、評価と格付に関して当該銀行等以外の地域の経済団体や中小企業団体、その他利害関係のある個人、企業、団体等から意見を聴取する。また、金融取引に関する苦情窓口を設け、利用者からの苦情等を直接調査することができる。

6、意見の申出

 委員会は、都道府県知事及び他の地方公共団体の長及び関係行政機関の長に対し、地域と中小企業の金融環境の活性化に関する施策についての意見を述べることができる。全国委員会は、内閣総理大臣と関係行政機関の長に対し、地域と中小企業の金融環境の活性化に関する施策についての意見を述べることができる。

7、監督機関への勧告

 委員会は、銀行等の総合格付が「改善を要す」「相当の未達成」に該当する銀行等が合併、分割、転換、営業の譲渡若しくは譲受け、本支店の新設又は地域からの撤退などの許可申請に際して、監督機関へ当該金融機関が認可基準に不適合である旨を勧告できる。

(6)地域と中小企業の金融環境の活性化に対する寄与の程度に関する評価と格付

1、地域・中小企業金融活性化評価委員会は、個々の銀行等の業務の運営に関する次に掲げる事項について調査を行い、その結果に基づき、個々の銀行等について、一年(地域金融機関のうち、申し出のあるものついては二年)に一回、地域と中小企業の金融環境の活性化に対する寄与の程度に関する評価と格付を行うものとすること。

1)融資の状況に関する事項
2)融資の手続に関する事項
3)その他地域と中小企業の金融環境の活性化に関し必要な事項

2、1の評価と格付の基準及び方法は主に次の事項であるが、細かくは政令で定める。

1)融資の状況に関する事項

A)地域貢献度
・資金運用に占める地元貸出比率。資金調達に占める地元比率。地元内取引率。
・当該金融機関の地域貢献活動の状況。地域開発への参加姿勢。
・多数者利用の度合い(小口多数取引率)。
・地方自治体の制度融資取扱比率。保証協会付保率とプロパー融資の割合。

B)中小企業貢献度
・金融機関が営業を行う地域で集めた資金(預金)と貸出比率。特に当該地域での中小企業貸出の比率。
・中小企業貸出の中での物的担保貸出と無担保貸出の割合。第三者連帯保証付貸出の割合。
・中小企業の融資申込みから融資実施までの平均日数。
・小規模企業や起業者、女性企業家、NPO等への融資実績及び支援活動の状況。

C)地域住民貢献度
・地域住民向け学資ローン、住宅ローン等の所得階層別構成と融資額。

2)融資の手続に関する事項

A)取引公正度
・利用者、融資先の利便性を高めるための努力や活動状況。
・銀行取引約定書に関して、(a)差し入れ方式でなく、双方契約所持方式となっているか、(b)銀行の民事上の責任を免除する規定及び銀行にのみ契約内容の変更権を認める規定などが改善されているか否か、など改善の度合。
・書面による融資基準の公表及び拒否理由の通知の有無と状況。
・説明責任を怠るなどの理由で利用者に不利益を与えた事例の有無。
・預金者、融資先からの苦情を処理するルールの有無とその状況。

B)資金供給安定度
・既存利用者の利便性を著しく害する本支店、出張所の移転・廃止の有無。
・融資額や融資条件の一方的変更の有無とその状況。
・融資条件の変更について融資先への文書通知の有無とそのルール設定など。