地域金融機関との連携協力進む
【中同協・金融プロジェクト会議】
9月19日、第5回中同協・金融プロジェクト会議(委員長、田山謙堂中同協顧問)が行われ、5名の委員全員が出席しました。本プロジェクトは中同協・政策委員会の諮問機関です。会議では初めに、「現在の金融情勢と金融行政の特徴について」と題して、齊藤正氏(駒澤大学経済学部教授)を講師にミニ研究会を行いました。会議の様子と齊藤氏の報告概要を紹介します。
齊藤氏の報告を受けた議論の中では、信金・信組など協同組織金融機関の地域で果たす重要性に鑑み、公的にこれらの金融機関をサポートし守るという政策的メッセージを同友会として提言していく必要があることや地域の資金需要を生み出す地域再生ファンドを研究することなどが話し合われました。
会議では、各同友会と地域金融機関の業務提携がここ2年間で、7同友会で9金融機関と連携協力が進んでいる状況が報告されました。最近では、宮城同友会と仙北信用組合との業務提携では、経営指針成文化などの要件で最大1%の金利優遇が目を引きます(本紙9月15日号既報)。この情報を察知した他県の信用組合が当該県の同友会に同趣旨の業務提携を持ちかけてきている話も出され、今後も地域金融機関との連携協力が進む勢いであることが確認されました。
また、村上e樹委員(愛知同友会理事)から、愛知同友会名古屋支部と名古屋市信用保証協会との懇談をきっかけに、保証協会側から依頼された保証協会の利用に関するアンケートに協力するなど連携が進んでいる状況が報告されました。
中同協・金融プロジェクト会議での報告より
現在の金融情勢と金融行政の特徴について
駒澤大学経済学部 教授齊藤正氏
世界経済を揺るがしている米国サブプライムローン問題は、市場原理主義に基づく証券化や格付け、リスク分散などのシステムがいかにいいかげんであり、経済の不安定化を増幅するものであるのかを露呈しました。これは、「貯蓄から投資へ」という日本の金融行政の方向に強烈な疑問を突き付けました。リスクマネーの規制が今後強く求められるでしょう。
今日の金融行政のスタンスを一言で表せば、業務範囲の自由度の拡大と規制の一元化です。投資信託等をどの金融機関でも扱えるようにするなど自由度を拡大する。それが、金融のコングロマリット化を促しています。また、会計基準など行政コントロールの一元化も進める。信金・信組などの金融機関の「会社化」の動きもルールの一元化の流れの中で浮上しています。さらに、政府系金融機関の一本化や信用補完制度の見直しなど公的金融の役割の後退、縮小が懸念されます。
地域密着型金融機関に対するリレーションシップバンキング政策が実施されて4年が経過しましたが、コスト高の重圧と収益性向上のジレンマに地域金融機関が置かれているのが実態です。
このような状況をどう打開するのか。やはり、皆さん方が主張してきた金融アセスメント法やアメリカの地域再投資法のような法的・制度的枠組みを整備することが改めて重要になっていることを強調したいと思います。
また、地域金融機関の高い「情報生産コスト」を自治体などが公的にサポートして軽減させる仕組みをつくることも大切です。
地域の持続的発展に向けて資金需要を生み出す「地域再生ファンド」の創造も今後のテーマです。