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シリーズ「どうなる金融〜不良債権最終処理」
「中小企業家しんぶん」2002年9月15日号より

シリーズ2

地域再生の芽・第2の創業どう支える

京都北部5信金合併 (下)


問われる存在意義

 9月に入り、日経平均が9000円を割り込み、金融機関の含み損が6兆円規模になったとして、金融システムを支えるため公的資金投入の声が再び大きくなってきています。政府は緊急デフレ対策の一環として、不良債権処理の迅速化を図るための対策などを検討しています。

 金融機関の経営の健全性をはかるものさしが「自己資本比率」とされ、地域金融機関も大手行と同様の金融検査マニュアルで検査されるため、中小企業金融に比重の高い信金・信組などでは、リスク管理のための貸倒引当金を大幅に積まねばならず、自己資本比率をアップさせるために貸出部分の圧縮を余儀なくされています。またそれと同時に、財務内容の厳しい金融機関の再編が促進されています。

 地域に身近な信金の再編の影響について、前回に引き続き京都北部の5信金合併から見てみます。


 京都北都を中心に、福知山、東舞鶴、舞鶴、綾部の5信金が今年11月には対等合併し、預金量8000億円の信金となります。合併に向けて店舗3割、人員2割減を各信金で処理することになっています。

地域優先より管理優先
 合併後の融資基準について現場の職員は、「当然北都信金にあわせることになってくる。財務状況の厳しい信金と取引していた企業にとっては厳しい結果となることは十分ある」とも。また「金融機関に求められている法的手続き(コンプライアンス)を確実に行い、金融庁が求める自己査定の内容にしようと思えば、本部機能に職員100〜150名は必要。合併前の信金でそれを各々賄うのは、規模的にも大変難しい」と言います。金融行政の矛盾の一端が伺えます。

アメとムチの金融政策
 今年5月に京都同友会宮津支部で開かれた例会では、細見壽彦・京都北都信金理事長が講師に立ちました。

 氏は「金融検査マニュアルのしばりを片手に取引をしなければならないのが現状。金融政策の流れは、500億円の貸し出し、20億円の自己資本がない金融機関は日本には必要ないというもののようだ。『中小企業融資編』をつくる一方で、金融機関はどんどん合併していけという、いわゆる『アメとムチ』ですすんでいる」とその現状を報告。融資については「当庫は集めた資金をこの地域で使ってもらわないとやっていけない」としつつも、「やる気のある人には貸す。返す気のない人までは貸せない」と話しています。

融資の継続に不安
 経営指針づくりを支部活動の柱に据えてきたという京都同友会福知山支部。その支部で役員経験も長いある製造業の社長は、「第2の創業」で債務超過からの脱出を図るべく、地元信金からの支援を受けて奮闘中です。

 10年前、5・5億円の融資を受けて独自に山を切り開き、新社屋と工場を建設。しかし単価の切り下げや受注減、多額の利払いなどで財務状況は急激に悪化。そんな中、同友会で学んできた経営指針づくりから全社一丸となってこの危機を乗りきろうと、2年前に再生計画を立てました。受注の小口化と客先の拡大、受注内容に応じた細やかな工程管理を実行。当面の給与の削減を理解できない社員が辞め、社員数が29名から19名になる中でも、技術力は着実に上げ、独自開発も行っています。

 緑に囲まれた本社で、この会社の社長は次のように話します。「地元信金は元金返済の1年間の繰り延べとともに金利を低く抑えてくれているが、融資額の約半分を占める政府系金融機関は市場金利の2倍以上高く重荷となっている。この度の信金合併で融資の継続に不安があるが、それ以上に政府系金融機関の対応に疑問を感じる」。

 この不況下でも、事業の再生をめざして、チャレンジ精神を発揮し、第2の創業を図ろうとする企業が多い中で、それを支援し、地域全体の活性化を図るべき地域金融機関が本来の役割を果たしていくことができるのか、金融機関を選べない地元中小企業の不安が募ります。

 

中同協事務局 平田美穂

調査 資料 対話 シリーズ「どうする政策金融Q&A」 シリーズ「どうなる金融〜不良債権最終処理」 シリーズ「どうなる金融〜信金再編の余波」 シリーズ「金融機関とともに地域を考える」 シリーズ「金融機関とともに東京同友会と東信協・保証協会」

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