中小企業憲章と私

地域の元気をつくる夢ふくらむ

埼玉同友会代表理事 新井 俊雄 ((株)アライ社長)


 2004年の中同協幹事会、東日本代表者会議、岡山での全国総会の度に「中小企業憲章」を学び、会としての取り組みの重要性を感じました。このことをどうやって会の皆さんに伝えていくのが良いのか悩むなかで、同友会が進めている問題とリンクさせながら、経営者とのかかわり、自社とのかかわりなど、身近でわかり易く関心のあることから、まずはモデルとして自分の体験から皆さんに訴えかけていくことにしました。特に酒類の販売業は、もともと地域とのかかわりがある業種で、皆さんにも比較的理解されやすい職業ですので、最近の業界事情や自社が取り組んでいることを中心に話をさせて頂きます。

 最近、特にこの1年はドッグイヤーの名にふさわしい激しい動きがあります。酒類の流通はビールを中心に従来の酒販店からディスカウントストアへ、最近では総合的な品揃えのあるスーパーやホームセンター等へ、消費者の購買習慣が大きく変化して、一般の酒販店は大きく後退しています。

 業務用分野の酒類流通にも大きな変化があり、昨年からビール各社が初めてオープンプライスを発表、今年より導入されました。これは、ビール会社はメーカー出荷価格を決めるから、流通業者は自分たちの流通コストを乗せて自主的に価格をつけて売って下さい、という制度です。

 現在、問屋は一般の酒販店には新価格で販売し、大手スーパーには力関係でいまだ値上げされない。それに連動して全国大手外食チェーンも値上げを認めない。町の飲食店は、問屋の仕入れが上がっているために、酒販店は値上げしているという二重構造が起きています。

 また、これを契機に外食チェーンも仕入れ全国一本化の動きが出て、従来はその地域の大手酒販店から購買していたものを、全国チェーンに対応できる商社系などの全国問屋に仕入れが集中してきました。また、その流れに対応できる全国ネット化を進めている酒販店に取引が集中し、それに外れれば、今までの取引が解消してしまうという恐ろしい現実が出てきています。

 弊社は、酒販店の中では比較的恵まれた業務用業者でしたが、市場がますます縮小していく中、自社は何を売りにするのかを明確にして、独自の商品やサービスを提供し、その地域にどのように根ざしていくのかが、これからは重要な鍵になります。

 そういった意味で、地方や地域の独自商品を開発したり、やる気のあるオーナーさんたちと店舗不動産関連業者等の協力で、地域に魅力のある飲食店をたくさんつくることは、町の魅力にもつながることにもなります。また、物流センターを生かして宅配機能を充実したり、飲食店街にある小規模な飲食店向けにお店で必要な酒食材が長時間営業で買える店舗を展開し、地域になくてはならない、あてにされる会社を作るという夢が膨らんできました。

 そのためにも、自社だけで解決できない多くの問題があり、さまざまなネットワークを生かして共生していければと考えております。このような輪の1つひとつの積み重ねが「中小企業憲章」につながっていくと確信しています。

「中小企業家しんぶん」 2005年 6月 15日号から

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