中小企業憲章と私

会員総体の知恵と汗を反映させよう

東京同友会副代表理事 三宅 一男 ((株)エピック ホーム社長)


 「憲章」の推進を構想するとき、3つの機軸が大切だと考えます。

 第1は「いかに創(つく)るか」であります。戦後60年憲法改正の動きで国の土台が揺れています。この震源地は「憲法制定が自主的であったか」に発しました。このことは「不磨の大典」にとって「自らが創る」ことがいかに決定的であるかを物語っています。

 私たちの「憲章」が幾星霜の歳月に耐え得るためには、この制定運動に中小企業経営者の内発的動機が結集され、その創造にみんなが参画したというプロセスが不可欠であります。いかに会員総体の知恵と汗が反映されるかが死命を決すると考えます。

 第2の機軸は、「何を創るか」であります。「憲章って俺(おれ)たちに何の得があるのか」、まことに素朴で正直な疑問です。しかも非常に大切な疑問です。なぜならこの問いは「何が自分にとって得なのか」が見えないことを示唆しているからです。

 この間、東京同友会では信用保証縮小の問題に取り組んできました。3回にわたる研究会で明らかになったのは、この問題は1999年の中小企業基本法改正に端を発するということでありました。まさに中小企業憲章の必然性を確認する作業となりました。

 経営現場をとりまく「不思議発見」。自社の課題、業界、市場、地域、さまざまな法規制。いわば経営の現場を深く掘り下げるところから「私たちにとって何が得なのか」を掘り起こしていくことこそ「学習」の目的ではないでしょうか。こうした経営阻害要因の集積の中から私たちの創るべき憲章の姿が見えてくるに違いありません。

 EUの小企業憲章も中同協の素案も、学習を進める参考資料であって、私たちの憲章は、一人ひとりが自らの答案を記すところから「何を創るべきか」を創造していくべきだと考えます。

 第3の機軸は、「なぜ創るか」であります。

 その目的は明白です。中小企業の「得」が国全体の「得」になることを確認することです。中小企業の経営合理性の最大化が国民経済合理性の最大化であることを、単なるスローガンではなく、科学的、理論的に明らかにしていくことであります。さらに、それを「経営指針」に高く掲げ、経営現場での実践によって「理念の正当性」を実証していくことであります。

 この確信を会員が共有できたとき、中小企業経営者の団体として広く市民に呼びかけ、国民的合意の形成をアピールするべきと考えます。

 最後に、1つ提案があります。この紙面を広く会員に提供し、憲章に関する自由な意見の広場を設けたらいかがでしょうか?

「中小企業家しんぶん」 2005年 7月 25日号から

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