人も商品も地域で循環、担い手は中小企業
広島同友会代表理事 大西 寛氏 (ヒロボシ(株)社長)
私の父は地酒メーカーを営んでおりました。そして長男の私は、大学卒業と同時に実家に帰り、父と一緒に酒造りを行っておりました。
私が27歳の時、当時の国の中小企業政策により転業することとなりました。それは中小企業を集約し、それにより高度化を図るものでした。酒蔵の跡地を生かし、冷蔵倉庫業に転業いたしました。また、当時の販売部門は、酒問屋として再出発を図ることになりました。
酒類の卸免許を得るには、多くの書類と10カ月の時間を要するものでした。わが社は広島市内ではもっとも後発の酒問屋として、1971年にスタートしました。
当時、広島市内に24社ほどの酒問屋が存在しておりましたが、現在は健全な姿で残っている地場の問屋はほとんど無くなりました。まさに激変消滅の時代を経て参りました。その多くは全国問屋の子会社となるか、廃業を選ぶかの道でした。
この時代もまさに、国の政策(自由化、規制緩和)により、小売免許の大幅な緩和政策で、古くからの地域の酒屋さんが消えてなくなりました。全国チェーンのコンビニエンスストアに酒類小売免許が下り、酒の売り場が、近所の酒屋さんから全国チェーンのコンビニに変わっていきました。そして、このようなチェーンの納入問屋は数社の全国問屋に限られ、地方の問屋は壊滅状態になったわけです。
幸いにもわが社は、まさに同友会で学んだお陰で自立型企業づくりに取り組み、早くから業態変更を図り、現在は同友会理念を会社で実践し、21世紀型企業づくりに取り組んでおります。
このようにわれわれの業界は、国の中小企業政策の影響を大きく受けて参りました。結果として地域の小売店が、地域の問屋さんがどんどん消えてなくなる。これで果たして良いのでしょうか。
私は、日本の経済の再生には地域の中小企業の活性化がもっとも大切であり、真に健全で活力あふれる地域の中小企業の発展が保障されなければならないと考えます。
地域で学んだ学生が地域の企業に就職し、そして地域に貢献する企業を共に育てていく、そしてさまざまな商売、商品等が地域の中で循環していく。このようなことを可能にするのは、大企業ではなく、中小企業の得意とするところであり、このような中小企業の役割を認め、保障する中小企業憲章の制定を強く望み、運動を強く進めて行きたいと思います。
「中小企業家しんぶん」 2005年 10月 15日号から