中小企業憲章と私

中小企業憲章制定・夢の実現

福岡同友会理事 中村 高明 ((株)紀ノ国屋社長)


 福岡県下24市63町7村の中で、中小企業振興条例を制定しているのは、福岡市、筑後市、志免町の3自治体しかありません。

 福岡市の条例と東京都墨田区の条例を比較してみると、次のような違いがあります。

(1)福岡市は「産業の高度化と中小企業の健全な発展を図り、産業の適性配置による都市機能の維持及び増進に資することを目的としている」一方、墨田区は「中小企業の健全な発展と区民福祉の向上に寄与することを目的」としていて、中小企業の発展と地域住民の暮らしの向上を関連づけています。

(2)福岡市は「目的を達成するため、融資のあっせん、施設的便宜の供与などの助成が中心」になっているのに対し、墨田区は、「墨田区の人と緑と産業の調和したまちづくりの実現を目標に、区内の中小企業の自らの創意工夫と自主的な努力を尊重し、その特性に応じた総合的な施策を国その他の機関の協力を得ながら企業、区民及び区が、自治と連帯のもとに一体となって推進することを基本とする」と規定しています。

 この違いは、福岡市が1973年、墨田区が1979年制定という時代の違いということもあるでしょうが、残念ながら、福岡市には市民が「生きる」「暮らしを守る」「人間らしく生きる」という人間中心の視点が欠落し、企業側からの視点のみで条例が作られたと解せざるを得ません。

 私たちは、11月16日第17回県経営者フォーラムを開催します。14ある分科会のうちの1つの分科会で、墨田区地域振興部商工担当産業経済課の高野祐次課長に「墨田区の産業がなぜ活性化されたのか」という演題で報告していただきます。

 私たちは、福岡県下のすべての市町村の首長に関係職員のご参加を要請しております。分科会の中で、私ども中小企業家と自治体の職員「中小企業憲章」「中小企業振興条例」について語りあうという福岡同友会史上、初の試みを行おうとしております。

 墨田区を範として、生きた振興条例を県下の全市町村に制定し、私ども同友会の代表も参加した審議会が設置されることも願っております。

 そして、金融アセスメント法制定運動の際に各自治体の議会の採択に基づき、制定の意見書を国に提出していただいたように、中小企業憲章の制定の意見書を提出していただくことを夢見ています。この夢が実現したとき、「中小企業憲章制定」の夢が実現すると確信しております。

「中小企業家しんぶん」 2005年 11月 15日号から

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