中小企業憲章と私

調和のとれた暮らしやすい地域を

千葉同友会ビジョン委員会 杉山 武氏(トーク税理士法人代表社員)


 景気が良いそうです。この景気拡大は、2006年10月で戦後最長の「いざなぎ景気」を越しそうだとのこと。確かに大企業は増収増益の好決算になり、中小企業の業況も総じて改善しているように見えます。しかしながら、会計事務所として比較的小規模企業中心の決算に携わっているわれわれにとって、景気が良くなっている実感は全くありません。

 それを裏付けるように、中小企業庁の「平成17年中小企業実態基本調査」では、売上高は51人以上の企業は前年度比0.3%の減少、50人以下の企業では、6.8%の減少。経常利益においては、従業員51人以上の企業は前年度より20.6%増加したのに対し、5人以下の企業では実に54.2%減少している旨を伝えています。

 大企業と中小企業の格差が広がるだけでなく、中小企業間でも企業規模による格差増大が浮き彫りになっています。既存小企業・自営業の存続が困難になってきた結果、企業の閉鎖率が開業率を上回る状況や商店街の空洞化等、地域経済の衰退に拍車をかけています。

 千葉同友会が長年千葉県に対し政策要望してきた「中小企業振興基本条例」が、来年の制定を目指して動き出し、その研究会が4月より開催されています。私もその会の副会長として参加させてもらっています。「中小企業元気戦略」として各項目につき、それぞれの立場の委員が意見を交わしていますが、グローバル化が進み、市場原理主義が浸透し、強いものがより強くなり、弱いものが淘汰される経済構造下では、個々の企業努力のみで元気戦略は構築されません。中小企業・自営業の位置付け・役割を正当に評価し、それに則して現行の中小企業基本法はじめ、諸法例を整備充実させる道筋をしめす中小企業憲章の存在があってはじめて中小企業が元気になれると思います。

 「中小企業振興基本条例」は「中小企業を元気にすること」が最終目的でなく、「調和の取れた暮らしやすい地域づくり」を目指すものであり、小企業・自営業が元気に存続できる地域づくり目指すものであると考えます。そのバックボーンとなる「中小企業憲章」の制定実現を願ってやみません。

「中小企業家しんぶん」 2006年 7月 15日号から

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