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【10.04.02】【特別企画】共に手を携えて中小企業憲章制定運動の前進を〜全国中央会、中同協両会長が対談

全国中小企業団体中央会会長・愛知県中小企業団体中央会会長
鶴田欣也氏(鶴田石材(株)代表取締役社長)
中小企業家同友会全国協議会(中同協)会長
鋤柄 修氏((株)エステム代表取締役会長)
司会 中同協副会長・専務幹事 国吉昌晴

司会 全国中央会と中同協の両会長対談は、2001年の新春に「21世紀を中小企業の時代に」をテーマに、全国中央会井上光一会長、中同協赤石義博会長(役職は当時)とで企画させていただきました。今回は、一昨年来世界的大不況が日本を襲うなかで、国民生活と地域経済の要となる中小企業がどう元気を取り戻していくのか、両団体トップに大いに語っていただきます。まず、簡単に団体の自己紹介からお願いします。

自助努力で強い体質の企業づくりを

鶴田 全国中央会は「中小企業等協同組合法」にもとづく協同組合等を束ねる全国組織です。中小企業が共同受注など共同で事業を行うことでメリットを生み出し、大企業に負けずに生き抜いていく。これは自助努力そのものです。中央会はその中核的立場で組合の運営にあたり、中小企業経営が円滑に進むような方策を打ち出すよう努力しています。

鋤柄 当会も47都道府県に同友会があり、中同協はその協議体です。各地域毎に、会員は、良い会社、良い経営者、良い経営環境をめざすという3つの目的の実現のため、学びあい活動に力を入れています。共同求人、社員教育活動、経営指針づくり活動が特に盛んです。自助努力で強じんな体質の企業をめざす点は共通していますね。

環境分野で中小企業が伸びる条件

司会 両会長とも愛知県に立地する企業ですが、企業の紹介もお願いします。

鶴田 当社は道路用、コンクリート用砕石を軸に山砂、洗砂、石材一般を扱っています。建設業界は、ピーク時の 88兆円から今は半減です。今後の見通しも厳しい。他に海運業や伐採した樹木をチップにするとか、市場で売れ残った野菜類をバイオ技術を使って土壌に返す等の事業もやっています。

鋤柄 私は水処理プラントの設計施工管理や水質分析等環境に関わる事業を行っています。昔は捨てていたものを今はリサイクル、再利用する技術も発達してきました。この分野は中小企業が伸びていける可能性が大いにあります。

鶴田 おっしゃる通り、環境分野は新技術やノウハウを持ち営業力があれば伸ばしていくことはできます。ただし、環境分野も限界がありますね。価格面でいくら研究しても乗り越えられない壁があります。1社の努力では難しい。こういうところに行政が支援して欲しい。

「仕事が欲しい」の切実な声

司会 2年前のリーマンショック以来の最悪の事態は脱しつつあるようにみえます。それぞれの団体の会員の経営実態の特徴、また、そこで最も望まれていることは何でしょうか。

鋤柄 中同協では3カ月に1回の景況調査を20年前から実施してきました。愛知同友会も独自調査を行っており、先日その分析会議がありました。皆さんの切実な声をズバリ表現すると「金融政策もよいが、仕事が欲しい」に尽きます。トヨタ系の会員企業は、QCD(品質、コスト、納期)を一生懸命実行してきた。しかし、今はこの3つをそろえていても仕事がこなければどうしようもない。

鶴田 そこです。仕事なんですよ。金利支払いの先延ばしもいいですよ。しかし、先に仕事がなければいずれ潰れてしまう。中央会も全国に2700名の情報連絡員がいて景況調査ができるシステムを持っています。新聞等では少し明るくなったとの報道がありますが、まだドボドボの状態。特にメッキ、金型がひどい。自動車産業でハイブリット化が進むとそれについていける企業とそうでない企業との格差が生じることも懸念されます。

中小企業憲章制定の意義を広めよう

司会 現在、政府が制定の準備を進めている中小企業憲章への期待、要望をお願いします。

鋤柄 私たちは、中小企業をその役割にふさわしい政策上の位置づけの抜本的な転換と、さらには国民の中小企業への意識改革が必要との認識に立ち、EU小企業憲章にも学び、2003年の全国総会で中小企業憲章制定を打ち出しました。以来、憲章の学習活動に着手、一昨年はEU視察も行いました。マニフェストに憲章制定を掲げた民主党が政権担当することで、中小企業庁も動き出し、すでに3回の中小企業憲章研究会が開かれています。

 中同協では、昨年の総会で「憲章草案(第1次・会内討議資料)」を発表、中小企業団体の皆さんと手を携えてこの趣旨を広く訴えていこうとしております。憲章の内容に私たちの思いを盛り込むこと、制定後も憲章の実行を精査する機関を確立することが大切です。お互いに力をあわせていきましょう。

鶴田 昨年、私が会長になってからこの中小企業憲章を取り上げ、実現への努力をしています。昨年11月の全国大会決議にも中小企業の連携・組織化政策の強化を中小企業憲章制定により推進すべきと盛り込みました。今年3月に「組織専門委員会」を開催し、憲章をテーマに討議を行いました。さらに、7月に箱根で全国から200名位集まりセミナーを行いますが、憲章の分科会を設けることになっています。憲章の論議に私たちの要望が反映され、よい方向で進むことを願っています。

政策提言・発信力の強化を

司会 最後に今後の中小企業団体のあり方について考えることをお話ください。

鋤柄 中小企業はサイズは小さくとも新しいビジネスを生み出す力を持っています。この中小企業の底力、可能性を育てる施策が必要です。新しいビジネスの創造で雇用が生まれます。このことを、経営者は社員と共に築き上げていくことです。愛知に限らず、大企業のピラミッド体制はあやしくなってきました。無数の中小企業が労使の努力で新しい仕事を創り出す。そういう社会のシンボルが中小企業憲章だと思うのです。日本の経済、社会の担い手としての自覚と責任、誇りを会内で打ち建てていきたいものです。

鶴田 私も昨年会長に就任する時、「夢と希望に満ち溢れた中央会づくりに全力投球します」をキャッチフレーズとしました。組織の構成員が苦しい時に愛の手を差し伸べられる組織でなければ存在意義はありません。自助努力を基本としつつも、中央に適切な施策の実行を訴えるリーダーシップを発揮していくことです。全国中央会300万社の団結と協調を重視しつつ、政策提言、発信に力点を置かねばなりません。当面は中小企業憲章をきっちりやりましょう。

司会 これを機会に両団体が中央でも各都道府県レベルでも連携強化をはかっていきましょう。本日はありがとうございました。

(3月10日・愛知県中小企業団体中央会にて)

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