原材料価格高騰で赤字・減益が8割
7~9月期採算面では会員企業の健闘ぶりがうかがえる DORオプション調査より

 「仕入価格の上昇があまりにも大きく、財務を圧迫して利益の確保が無理な状態です」(山口・建設業)、「値段を変えないで頑張ってきたが毎月の値上がりに対応しきれない」(埼玉・小売業)―9月に実施した同友会景況調査(DOR、2008年7~9月期)のオプション調査結果では、原材料高騰と苦闘する会員企業の状況が見えてきました(回答数108社)。

中小企業全体が利益圧縮の危機

 オプション調査はまず、原材料高騰がこの1年間で利益に与えた影響について尋ねています。結果は「赤字になった」は12・6%にとどまったものの67・6%が「赤字にまではならないが、予定利益が減少した」と答え、「赤字になった」と合わせると実に約8割が利益を減少させています。まさに中小企業全体が利益圧縮の危機にあります。(図1)

図1 原材料価格高騰の影響(年間)

DOR84号オプション調査図表1

 これを正規従業員規模別に見ると「赤字になった」と答えたのは、20人未満が14・6%、50人未満が13・2%、100人未満が11%と並んでおり、規模の小さい企業ほど赤字になった割合が多くなっています。

 業種別では、建設業で「赤字になった」が18・3%と、全体よりも6ポイント近く上回っていることが注目されます。

減収のなかでも3分の2が赤字を回避

 原材料価格高騰のもとで、会員企業の採算水準がどうなっているかをみると、健闘状況が浮かび上がります(図2)。

 原材料高騰と仕入価格の上昇の影響(年間)として、「赤字にまではならないが、予定利益が減少した」と回答した企業(67・6%)の中で今期の採算水準を見ると、予定利益が減少したにもかかわらず黒字が38・8%とトップ、収支トントンの28・2%と合わせて67%でした。

 さらに「赤字になった」と回答した企業の中でも、今期の採算水準では「黒字」(8・5%)、「収支トントン」(14・2%)となっています。

 原材料価格高騰の影響により、この1年間で減収・赤字となった企業でも、今期の採算水準でみると、3分の2近い企業は赤字転落を免れ、約3分の1は黒字を確保するなど、この間の異常なまでの原材料高騰のもとでも、会員企業は全体として健闘しているといえます。

図2 原材料価格高騰の影響(年間)と採算水準(7~9月期)

DOR84号オプション調査図表2

販売価格への転嫁は全体として困難

 しかし、仕入価格高騰分の販売価格への転嫁状況では、「ほぼ転嫁できている」は13・3%にとどまる一方、「一部転嫁できている」が46・4%、「ほとんど転嫁できていない」が40・3%にのぼり、全体として苦戦状況です。

 なかでも建設業が際立っており、「ほとんど転嫁できていない」が52・1%で「一部転嫁できている」(45%)よりも多くなっています。建設業の仕入単価DIは3年前の2005年7~9月期に29だったものが今期は85と、他業種と比べても急上昇しており、このことが販売価格への転嫁を他の業種より困難にしていることがうかがえます。

 規模別にみると、全業種の50人以上100人未満で「ほとんど転嫁できていない」が47・8%と、20人未満や50人未満を上回っており、「ほぼ転嫁できている」「一部転嫁できている」の回答が20人未満よりも少ないことが注目されます(図3)。50人以上100人未満規模はこの間、売上高DIと付加価値DIも他の規模よりもポイントを際立って下げており、販売価格への転嫁が難しい状況が読み取れます。

図3 原材料価格高騰の転嫁状況(規模別)

DOR84号オプション調査図表3

収益確保への対応~人件費削減も始まる

 このように全体として販売価格への転嫁が困難なもとで、どのようにして収益を確保しているのでしょうか。

 原材料価格高騰への対応を聞くと、対応の難しさが一段と増していることが分かります(図4)。

 全体をみると、「諸経費の削減」の60・1%と「販売価格への価格転嫁」の55・8%がトップを争い、その後には「仕入れ先の見直し」(28・4%)、「商品構成の見直し」(17・9%)、「省エネ対策」(17・7%)が続きます。「人件費の削減」も9・1%存在します。

 規模別にみると、50人以上100人未満規模で「人件費の削減」が16・7%と他の規模より約10ポイント高くなっています。同規模企業において特に販売価格への転嫁が困難な状況と総合すると、諸経費の削減等だけでは収益確保には間に合わず、やむなく人件費削減が行われている様子が浮かび上がります。

図4 原材料価格高騰への対応(規模別)

DOR84号オプション調査図表4

 「コスト削減は限界を超えている。ボーナスのカット、高齢者社員の給与カット、もちろん、社長・役員の報酬カット…などやれることはやりたい」(北海道)などの記述回答もそれを裏付けています。新規雇用や設備投資も先細りです。

 原材料高騰がこのまま続けば、全規模に波及し、さらに不況に拍車をかけることになります。

中小企業支援する政策を早急に

 この問題では、中小企業経営の引き続く自己努力も限界に近づくなか、国など行政による政策的前進が待たれます。

 国や行政に望むことの問いでは、「国際的投機を防止する対策」(60・8%)と「灯油・ガソリン等の税率低減」(54・4%)がとりわけ多くなっています。また「中小企業への緊急融資の実施」(28・8%)が約3割に上ることも注目されます。資金繰りDIが急落する中、金融混乱の影響から資金繰りの深刻な悪化が懸念されます。

 こうした中で、「何よりも景気をよくする国の政策転換が必要である…国民本位の政治を望むばかりである」(京都)の指摘もあるように、切実な実態と要望をよくふまえた早急な政策的手立てが求められます。

「中小企業家しんぶん」 2008年 11月 5日号より