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中小企業家しんぶん

コラム「円卓」のバックナンバー

●2011年 2月 5日号

▼「こころよく我にはたらく仕事あれ それをし遂げて死なむと思う」。『一握の砂』に収められた石川啄木の歌です。自分にとってこれこそ「天職」と思える仕事に向きあい、思う存分力を発揮し、「やるべきことはやった」と満足感を持って人生を終えたいとの願いをよんだものでしょう

▼教育学の泰斗、大田堯さんはこの歌から人間の持つ二面性が読み取れるといいます。1つは、「こころよく」とは、自分の心の中で満足、納得できるもの、他者とは違う自己存在の表現であること。もう1つは、「仕事」とは、他者の役に立つことであり、それが自分の喜びにもなること

▼すなわち前者は、異なる生命体が持つ自己中心の欲求であり、後者は、他者によりかからなければ生きていけない生命体の宿命を現します。両者は矛盾した存在ですが、この2つをうまく調和させるのが「働くこと」と説明します。啄木の歌は、「働くこと」の理想を表し、「完全就業」の歌といってよい、と説きます

▼先日、埼玉同友会での学習会で出会った学びのひとコマ。自分自身への問いかけであり、さらには就活で苦労する若者たちと「働くこと」の意味を共に考えるのが大人の責任と思いました。

「中小企業家しんぶん」 2月 5日号より


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