【酒蔵14】「環境と健康」テーマに有機の酒造り 八戸酒造(株)(青森)

「環境と健康」テーマに有機の酒造り
自然本来の水田取り戻し、安全・安心な米で新たな日本酒文化を
八戸酒造(株)(青森)

創業は1775年

 八戸市は青森県南東部に位置し、太平洋に面した「種差海岸」は国の名勝地に指定され、「蕪島ウミネコ繁殖地」は国の天然記念物に指定されている風光明媚な「海の町」であり、全国屈指の水産都市でもあります。また、北東北随一の工業都市として環境エネルギー産業創造特区認定を受け、注目されています。

 八戸酒造(株)の駒井庄三郎社長(青森同友会会員)は、蔵元の8代目にあたります。

 創業は初代庄三郎(滋賀県出身)が盛岡南部藩御用商人村市にて酒造を修業し、1775年(安永4年)、村市剣吉店支配役を務めるかたわら、麹屋を開業したのに始まります。

 その後3代目まで村市八戸店にて酒造りを営み、1888年(明治21年)4代目のとき、漁港と海運の拠点となっていた湊町に拠点を移し、新たに酒造業を開始します。

 その後5代目は1910年、全国で唯一の男山の付く銘柄「陸奥男山」を商標登録し、宮内省御用達品として納めるなど、その名を高めます。

 6代目は「酒は寝ないで造って、寝て売れ」との名言を残し、全国清酒品評会にて県内初の「名誉賞」を受賞するなど、数々の優等賞を獲得し、その品質を高めます。

戦時中の企業合同から分離独立

 1944年(昭和19年)戦時中の企業整備令により、八戸地方の造り酒屋16軒が企業合同させられ「八戸酒類」に。戦後は企業合同から元に戻ることが多かった中、八戸酒類はそのまま存続しました。

 7代目の時、企業合同の矛盾と弊害が生ずる中、自己責任経営と各蔵元の独自性を求める意味で分離独立の意思を表明。現当主8代目がその意志を引き継ぎ、1994年(平成6年)に八戸酒類からの分離独立の行動を起こします。

 1998年からは、旧「八戸酒造」(福牡丹松橋酒造店)で、駒井氏が新銘柄陸奥の地の酒「八仙シリーズ」を発売開始。1999年、松橋氏から営業譲渡を受けた駒井氏が社長となり、現在の八戸酒造(株)が再出発します。

有機認定米だけの酒造り

 以来、駒井氏は、「環境と健康」を酒造りの基本理念として、1998年から地元の農家と契約栽培した自然農法米を、2001年以降は、有機認定の米だけを使った酒造りに着手します。

 2002年、国の有機認証制度ができたのを受け、同年2月に国産第1号の有機農産物加工酒類の認証をとり、11月には全国で第2号となる日本農林規格有機農産物加工食品製造認定工場となり、そこから有機米100%純米吟醸酒「陸奥田心」が生まれました。

 「環境と健康」にこだわる下地は昭和50年(1975年)代、地酒ブームの時、「米と麹だけで造る本物の日本酒」という概念が普及し、純米酒、吟醸酒などが注目されます。

 その後、ブームは下火になりましたが、駒井社長は「『環境と健康』という時代の求める本物の酒造りをめざし、有機の酒に取り組むことによって、自然本来の水田を取り戻し、安全、安心な米を使った酒造りの全国的な普及をめざしたい」としています。

【会社概要】
創業 1775年(安永4年)
資本金 1000万円
年商 2億3000万円
社員数 11名
業種 清酒製造
所在地 青森県八戸市大字湊町字本町 工場:八戸市類家
TEL 0178-43-0616

「中小企業家しんぶん」 2006年 6月 15日号より