地域活性化は地元産業の成長から

~エコノミックガーデニングの発想に学ぶ

 地方経済の衰退や地域間格差問題が、昨年の参議院選挙でも焦点となりました。福田内閣は昨年、地域活性化統合本部を設置して緊急プランをとりまとめ、「地方再生戦略」を発表。「中小企業地域資源活用促進法」と「企業立地促進法」の地域2法も制定され、支援強化に努めています。

 一方、各自治体は企業誘致活動も活発化させており、自治体間競争も激しくなっています。企業誘致で50億円以上の高額補助金を用意している自治体は、前年から2つ増え、昨年11自治体に増加しました。企業誘致政策に関して本欄では、その限界を指摘しつつ、地元企業との関係など地域の活性化に必要であるか否か、主体的に選択する課題であると整理しました(本紙07年10月15日付)。

 企業誘致に熱心で、マスコミへ登場も多い知事のいる県の同友会事務局長から、興味深い情報を提供していただきました。米国で注目されている「エコノミックガーデニング」という地域再生手法です。「ガーデニング」という言葉の通り、たくさんのきれいな花が咲く庭園を造るように、手間暇をかけて地元の産業を成長させる手法ですが、最初に実践したコロラド州リトルトン市では、この手法を採用して以来、15年間で雇用を2倍以上、売上税収入を3倍に増やしました。

 リトルトン市では、「企業家精神あふれる地元の中小企業が活躍できる環境を創出する」という原則の下、「商業や生活の質を維持向上させるインフラの整備、産学官プラス市民の連携による企業とサポーターとの交流・意見交換の改善、企業に対する市場情報や市場分析の提供などが実施」(山本尚史「地域再生に向けて」『宮崎日日新聞』08年2月5日付)されました。

 また、成功産業のみの摘み取りではなく、多様なセクターにおける全ての規模の企業成長がなされることを成功と考えていることも注目される視点です。

 米国でこの手法が注目される背景には、自治体の企業誘致コスト負担増大への懸念があります。米国でも、税制優遇や用地整備、補助金提供などの負担が企業誘致のベネフィットを上回る恐れがあるわけです。さらに、企業誘致により地元企業が廃業したり、売上が減少したりするなど隠れたコストも発生します。そこで、「企業誘致アプローチを補完し、状況においては代替するアプローチとして起業促進と地元企業の育成に焦点を当てるエコノミックガーデニングに期待が寄せられている」(『地域開発』07年10月号)のです。

 この手法は、日本での地域特有の資源や技術に依拠する内発的発展論に通じるところがあります。また、中小企業振興基本条例や地域ビジョンを策定し、実践する上での有力な手法・政策として参考にできます。

 地域で同友会が「エコノミックガーデナー(庭師)」として腕をふるうことが期待されています。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2008年 2月 15日号より