障害者の就労支援で会員企業がコラボレート~アトリエふくろう & (有)京都成和ベジタブル【京都】

野菜をカットする「かまきり屋」

野菜のカット作業に従事する利用者の皆さん

 京都同友会会員のアトリエふくろう(林剛社長)と(有)京都成和ベジタブル(新井一成社長)のコラボレート(連携・協力)で、障害者就労支援のための事業所「かまきり屋」を7月に設立しました。京都同友会障害者問題委員会では、このほど同事業所を訪問。参加者の感想報告を掲載します。

 先日、「かまきり屋」という新しい作業施設を見学しました。業務内容が野菜をカットする仕事なので、「かまきり屋」です。

 アトリエふくろうの社長であり、ふくろう共働作業所の所長でもある林剛氏には、私たち障害者問題委員会でもなかなか踏み込めなかった「精神障害者分野」に関するさまざまなことについて、昨年1年間計画的に研修・学習会などの機会を設け、講師もして頂きました。

 「かまきり屋」発足では、林氏が京田辺支部例会で一時間あまり話し、それを聞いた(有)京都成和ベジタブルの新井一成社長が「自分が考えている方向とも合うのではないか?」と、その後2人して飲み屋で話し合い、以降も具体的に種々の諸問題もクリアして1カ月後に業務を開始しました。

 「かまきり屋」は企業と社会福祉法人との企業内授産の形式です。障害者も一気に企業に放り込まれるより、いつもの職員もいるシステムで就労できるほうが安心感を持てます。こういう形態をずっと考えていた林氏は、実際の仕事に関してもいろんなことを試しています。

 当初は野菜のカット15キログラムの1箱を作るのに6分かかっていました。しかし、これでは1日の仕事量には到底及びません。今回の企業内授産は、受けてくれた施設のある職員がいなかったら実現できなかったと林さん。2人のリーダーでまず動線をチェックし、最初に各部署で対応できる障害者を配置。試行錯誤の末、1箱のカット時間が2カ月足らずで2分ほどに短縮され、見学したころにはそれも割るくらい時間短縮できました。

 「1日1・5トンはクリアしないとビジネスにはならないと考えていたが、今ではそれ以上の能力が備わってきた」と自信を示します。野菜カットの発注元である(有)京都成和ベジタブルの新井さんも、できなかった場合のことも想定し、事前に自社の社員に待機をさせていたと聞きました。

 「最初は当然不安がありますが、成し遂げたとき、間違っていなかったことを確信するのです。仕事をするってことは、そういうこともすべて含むのです。これは障害者だけでなく普通の人の仕事でも同じこと」。

 この冷静さも障害者の就労上必要なことですが、こんな専門家集団でないと障害者雇用はできないというものでもありません。

 障害者は、接してくれる社員がいることに安心する。それを企業側がわかって対応できれば、わが社の経験からいっても何も問題はない。そこには1人の労働者として認めていくだけのしっかりした「企業理念」がなければならない。これを引っ張るのは、社長かもしれませんが、あとは社員全員の役目です。こういう気持ちが社員の中にあれば、障害者雇用なんて、なにも問題はないのですが…。

 林さんは「当然ビジネスですので、課題もいろいろあります。私だけでなく施設がどうかかわってくれるか、元請けが今後ともわが社を選んでくれるのか、わが社もいつまでも今の元請けを選んでいけるのか。仕事上では、お互い同等なのです」と話します。

 林さんの自信は、短期間に目標を達成できた喜びと、仲間たちが明るく働ける場を提供できたことにあるのでしょう。

京都同友会障害者問題委員 塩谷 隆好

「中小企業家しんぶん」 2008年 9月 25日号より