注目される日本の林業再生

豊富な森林資源に大きな可能性を見る

 近年、第1次産業、農業への関心が高まっています。さらに、ビジネスとしても潜在的可能性のある林業も注目されつつあります。

 政府は2009年12月に発表した「新成長戦略」の1つとして、林業を成長産業と位置付け、木材自給率を現在の20%から「10年後に50%に拡大する」とし、同時に発表された「森林・林業再生プラン」でその方策が示されました。

 日本の森林面積は2500万ヘクタールで国土の68%は森林です。森林面積はここ40年間ほぼ横ばいで変化していませんが、森林蓄積は、1966 年の約19億立方メートルから、2007年には約44億立方メートルへと急増しています。人工林では5倍に増加しており、収穫期を迎えています。過去に例を見ないほど木材が豊富にある時代なのです。

 ところが、森林の豊富さにかかわらず、日本の林業は衰退の一途をたどっています。これまでは、日本の木材が輸入材に比べて高価であるとされてきました。

 しかし、この説明はもう通用しません。日本のスギ(丸太ベース)価格は、2008年現在で1万1800円/立方メートルであるのに対し、国内産スギの代用品とされる米国産のベイツガの値段は、2万6400円/立方メートルもします。日本のヒノキも、2008年には2万3400円/立方メートルにまで下落しています(西澤隆・桑原真樹著『日本経済・地方からの再生』東洋経済新報社)。

 日本と同程度の1人当たりの森林面積でありながら、世界第3位の製材輸出国であるドイツでは、林業関連産業が対GDP比で5%を占め、自動車産業を超える水準にまで到達しています。ドイツは林業の国とも言えるのです。

 さらに、ドイツの隣のオーストリアも林業国。急峻な地形のアルプス林業地帯であり、小規模な森林所有者が多いなど、林業を取り巻く条件は日本と大差ないといわれます。しかも、賃金コストに関しては、時間当たり4000円、1日当たりでは3万円を超え、日本の倍以上という水準にあります。ところが、そこで生産された木材が、鉄道でハンブルグを経由して、わざわざ船で日本にまで輸送されているという実態があります(「日経ビジネス・オンライン」3月1 日付)。

 日本は、森林所有者をサポートするシステムも、木材生産や森林整備に不可欠の路網も未整備のまま来てしまったツケを払っている構図です。

 では、日本林業に可能性はあるのか。実は、大きな可能性があります。日本は豊富な森林資源に加え、国内需要も8600万立方メートルと、世界3位の規模を誇る木材消費国でもあります。需給両面で、林業の競争優位性を発揮できる条件は揃っているのです。

 「森林・林業再生プラン」では、林業経営・技術の高度化、人材育成など課題が示されています。

 このような動きも見据えつつ、昨年の全国研究集会(熊本)での森昭木材(株)の田岡秀昭社長(高知同友会会員)の報告などにも学び、同友会の中でも林業再生について考える機会が広がることが期待されます。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2010年 3月 15日号より