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日本のものづくりの生きる道

“ガラパゴス”からの逆襲

 日本のものづくりを揶揄(やゆ)する言葉で、「ガラパゴス化」があります。

 ダーウィンの『種の起源』で有名になったガラパゴス島が独自の生態系を維持して進化発展したが、世界の進化から大きく取り残されてしまったことを日本国内で独自の進化を遂げた日本製品の現状にたとえて、その弱点を指摘した言葉です。いわく、日本だけで進化した技術は世界では通用しない、日本は“孤島”に取り残されつつある、と。

 しかし、新聞や雑誌が“ガラパゴス”と自嘲的に言うたびに、「本当かな」という疑問がわきます。むしろ、独自の進化を遂げていることをポジティブに評価することができるのではないかとさえ思います。

 近頃、「超ガラパゴス化」などのキーワードで、日本製品の独自の進化を評価し、そこに今後の可能性を見いだそうとする論考を散見するようになりました。

 中でも、北嶋守氏の「文化受容体を内蔵した日本の耐久消費財の可能性~多様性に馴染む製品による“ガラパゴス”からの逆襲」(『機械経済研究 No.41』(財)機械振興協会経済研究所)は、示唆に富む内容です。

 本論文で北嶋氏は、日本のものづくりの発展戦略の手がかりを日本国内の市場に特化して独自の進化を遂げてきた耐久消費財の可能性に求めます。

 日本の文化、日本人の生活文化と相互に作用し、製品機能を進化させてきた耐久消費財は、電気こたつや電気炊飯器、冷蔵庫、洗濯機、電子体温計、ウォシュレット等々、枚挙にいとまがありません。氏は、「ここまでやるのか、こんな機能があるのか」といったように、しつこいくらいの機能が備わる日本の耐久消費財には、高度な製造技術と技能が盛り込まれていると指摘します。

 しかし、これらの製品の国内市場は縮小し、多くの企業は成熟化製品の事業から撤退を余儀なくされつつあります。では、どこに可能性を見いだすのか。北嶋氏は、世界に広がるローカル市場の獲得こそ、日本の耐久消費財の生き残る道であると結論づけます。

 北嶋氏は、トーマス・フリードマン著の『フラット化する世界』から「アジアでのグローバリゼーションは英語化が進むかと思いきや、まったく逆です。…国外移住者の市場とは、移住者の国の言語の国際新聞、国際テレビ・ラジオ局なのです。これをローカルのグローバリゼーションと呼ぶことにしています」「ローカルのほうがグローバルにひろがります」という言葉を引用。そこに日本の耐久消費財に蓄積されてきた製品化技術、特に無理難題に果敢に挑戦してきた中小企業のものづくり力の新たな発展の可能性があると指摘します。

 多様性に馴染む製品を提供してきた日本の技術は、世界のローカルな市場にきめ細かく的確に対応ができるはずであり、そうしたかなり面倒くさい製品は、日本の製造業しか提供できないと断言します。それは、欧州発の世界標準規格にも、米国発ネットワーク社会対応のデファクト・スタンダードにも、量産に邁進する中国にも、できないものづくりである、と。

 多くの課題はありますが、日本の技術の良さと強みを生かせる道が見えてきたような気がします。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2010年 4月 15日号より

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