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【第1次産業を地域再生の光に】(3) 消費者と向き合おう課題はお客様との共育ち【北海道・帯広支部】

共同店舗「ふぁーまーずとかち」の軌跡

 今回は、大農業地帯で知られる北海道・十勝から、農業生産者が「消費者と向き合おう」と始まった共同販売の取り組み「ふぁーまーずとかち」の軌跡を紹介します。

消費者との距離を縮めたい

 北海道東部に位置する十勝は、大農業地帯として全国的に知られています。十勝地域の農業算出額は2500億円、1戸当たりの耕地面積は38ヘクタールと、北海道平均の約2倍、全国平均の24倍となっています。

 北海道同友会帯広支部では、「これからの生産者は世界的な情勢の変化に自らの力で対応する力をつけよう」と、全国に先駆けて1989年に農業経営部会が発足しています。

 部会発足当時から、日本の原料供給基地としての十勝の位置づけに甘んずることなく、「消費者としっかり向き合きあおう」とファームレストラン、チーズ等の乳製品、牛肉のブランド化の活動にも取り組んで来ました。

 そのような取り組みの中で2004年5月、農業視察のために農業経営部会のメンバーは中国山東省青島を訪問しました。

 日本の商社が指導し、衛生管理が行きとどいた工場を目の当たりにし、強い危機感を抱きました。中国農業に対応するためには、十勝は「価格が高くても売れる商品作りが必要だ」と再確認しました。

 帰国後、部会有志が集まり、十勝ブランドの確立のために、お客様のニーズを肌で感じようと帯広市の中心商店街に共同店舗を出店する企画を打ち出しました。

実験営業をスタート

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 検討会議を重ね、2004年8月に農経部会有志が「ふぁーまーずとかち」を立ち上げ、2カ月間と期間をきめ、12名の生産者が出品して実験営業をスタートさせました。

 農家が野菜や乳製品、肉類を持ちこんで販売する形態がとられ、店舗には生産者の顔写真を張り出すなどの工夫をし、顔の見える販売を心がけました。鮮度の良い野菜に人気が集まり、地場産品を求める一般消費者や中心街の飲食店経営者から支持を得ました。

 しかし、当時は売上の精算等の商品管理を手作業で行う苦労もありました。

新たな店舗での挑戦―消費者ニーズとのミスマッチも

 前年度の実験店舗での販売から発展し、2005年5月から11月、実験店舗の近くに新たなスペースを借りて営業しました。レイアウトを自分たちの手で工夫し、専属の販売員を2名雇い、14名の生産者で新たなスタートを切りました。

 しかし、牛乳やチーズ・ヨーグルト等の加工品がなかなか売れません。新たな取り組みとして秋野菜の配達を行いましたが、売上は伸びませんでした。

 実験店舗と比較し、約半分の売り場面積であったことや、近所で大手スーパーが営業していた影響等が考えられました。結論として消費者の求めるものは圧倒的に生鮮野菜であるということがわかりました。

 当時、経理担当として参画した児玉ヘルス商事(株)社長の児玉誠也さんは、「例えば、街の中心にお年寄りが多いとの結果がマーケティングでは出ていましたが、10キロの箱詰めしたジャガイモを売るなど、マーケティングの結果を生かしきれていなかった」と当時を振り返ります。

 生産者の「自信作を安くたくさん食べてほしい」との想いと、消費者のニーズがマッチしていない結果でした。「売る」こと、共同で事業をやることの難しさを改めて知ることとなりました。

大きな転機―コープとの出会い

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 「ふぁーまーずとかち」の活動を通じて、生産者が店頭に立ち、想いを伝えるのが理想ですが、生産者は農場で生産をしなければならず、頻繁に店頭に立つことはできない。こういった葛藤にも直面しました。また、街中での単独店での「集客」の難しさも痛感しました。

 出店先や販売方法に頭を悩ませている中、当時のコープ十勝(現、コープさっぽろ)ベルデ店より、野菜売場の一角に「ふぁーまーずとかち」のコーナーを設けてはどうかという話が舞い込みました。

 コープの「農家と提携し、産直販売をしたい」という構想と、「ふぁーまーずとかち」の「安心・安全なものを理解してくれる客層にアピールできる」という想いが合致しました。

 2006年春、「ふぁーまーずとかち」の農産品が「ご近所野菜」としてベルデ店の店頭に並ぶこととなりました。2畳分のスペースでの販売ですが、売上は好調で、スタート当初より、毎年20%増の売上となっています。

 コープにとっても、直売コーナーを作ったことで来客数が約15%伸びたという結果が出ており、野菜売り場全体の売上があがり、相乗効果が生まれています。

指名される生産者としての誇りを持って

 現在では、5生産者が生鮮野菜をメインに出荷しています。「○○さんのキャベツが欲しい」と名指しで購入していくお客様もいます。個々の農家のファンができるほどの人気ぶりで、開店直後にお客様が殺到し、午後になるころには品がほとんどなくなってしまう状態が続いています。

 「ふぁーまーずとかち」代表の苧坂(おさか)隆一さん(トマトハウス)は、今後の展望について、次のように話しています。

 「最初は、実験店舗でのさまざまな苦労から作付けを手控えていましたが、コープベルデの販売実績が上がったことが自信となり、ハウスを増やすなど直売所での生産にも力が入るようになりました。

 毎朝自分で野菜の値段を決めて、店頭に並べ、翌日納品時に売れ残りを回収するのですが、完売しているかどうかで前日の評価がわかります。毎日毎日がお客様の心をつかむ真剣勝負と感じるようになりました」。

お客様との共育が新たな課題

 「今後、“生産者と消費者の交流会”を予定しています。口蹄疫問題等から、お客様を畑や牛舎に入れることは難しくなりつつありますが、野菜や家畜の“命をいただく”ことで人間は生きていけるのです。農場で農業と命のつながりを体験してもらうことは大切なこと」と語る苧坂さん。「ふぁーまーずとかちの課題は?」という問いに、「お客様との“共育”が新たな課題です」と、明快でした。

取材/北海道同友会事務局 滝口 由美

「中小企業家しんぶん」 2010年 7月 5日号より

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