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【第1次産業を地域再生の光に】(4) “くりはら風土”の創造で地域から元気を発信!-栗原発「農商工連携」(1)

「くりこま漢方和牛」から直売館「よさこい」、そして~(有)ゑびす (株)ダイチ 社長 佐藤勝郎氏(宮城)

佐藤社長

 宮城県は人口が約220万人、そのうち仙台市に約106万人と一極集中しており、東北の中心地となっています。仙台から60キロメートルほど北に位置する栗原市は、面積は県内で最も広く、人口は約7万7000人、第1次産業が中心です。その栗原市で、同友会会員同士5社による民間の道の駅「くりはら直売館よさこい」を開設し、第1次産業を柱に地域再生に向けた取り組みを推進している宮城同友会栗原登米支部の2社(2社とも「農商工等連携事業計画」認定)の実践を、全国総会第13分科会での報告より2回に分けて紹介します。

 栗原登米支部では、このような活動のなかから、行政や他の主要経済16団体、金融機関6行を巻き込んだ「“未来のくりはら”元気産業プロジェクト」を設立するなど(本紙8月15日号既報)、中小企業憲章、中小企業振興基本条例の制定運動の新たなモデル地域となってきています。

地域の食材を使う中で畜産農家と出会い

 私は栗原市栗駒で、農家に生まれました。高校を卒業する頃から「事業を起こして独立したい」という夢を抱き、1997年、38歳のときに地元銀行から倒産した居酒屋の物件を紹介され、開業しました。

 起業して2年ほど経過したころ、地域との関わりも増え、社員と話し合うなかで、何か地元に恩返しをしていきたいと考え、地域にある食材をできるだけ使っていくことにしました。

 ある畜産農家の方が、2000年の口蹄疫、2001年のBSE発生問題を期に、「食べて健康になれる牛肉」を探求し続けていました。「人がおいしく食べて、健康になるには、牛自体が健康でなければならない」と、人が牛を「食べる」という究極の行為を突き詰めて考えながら試行錯誤するなかで、餌に「漢方草」、自然の中で適度に運動しストレスを与えない「放牧」という飼育方法にたどり着きました。その畜産農家は、約2年間をかけ、「新生漢方牛」というブランド牛として出荷に至りました。

 私は、はじめは販売の手伝いのつもりで始めたのですが、その後、同友会で学ぶ中で、もっと牛肉の販路拡大に積極的に関わるため、自社で肉を加工し販売できるよう、自社工場を設立しました。農商工連携のはしりであり、その後、国の認定を受けてからは、さらに新しい取り組みの構築を始めたところです。

指針づくりで地域とのかかわりをより深く

くりこま漢方牛

 同友会への入会は、栗原登米に地区会が発足したのがきっかけでした。入会し、改めて「地域」を考え、同友会の「経営指針を創る会」に参加して経営理念も作成しました。そこでは、「自社の事業を通して地域社会にどのように向き合っていくのか」を一番に考え、より一層地域との関わりを深く考えるようになりました。

 もともと地域食材は活用していましたが、これまでは自分たちの都合やメニューに合わせて使っていました。しかし、理念の作成後は、「地域にあるものを自分たちがどのように使っていけるのか」という全く正反対の考え方になりました。その後、たくさんの農家とのつながりを進めてきたことで「農商工連携」にたどり着くことができました。

 それまでは「新生漢方牛」というブランドで販売してきましたが、地域性をより強く打ち出すために「くりこま漢方和牛」という名称に変更しました。違いは、新生漢方牛は交雑、乳牛と和牛を掛けたものなどで生産してきましたが、もっと形を絞り「和牛」と表示をできるもの、なおかつ牧場で自然交配、自然分娩という定義づけをして新たなものを生産しながら農商工連携の認定に至りました。

栗原全体を元気にしていこうと「よさこい」設立

よさこい

 こうした取り組みのなかで「くりはら直売館よさこい」(以下、「よさこい」)の設立にたどり着きました。 「よさこい」は、「富県宮城グランプリ」(宮城県政において、県内生産額向上のための一番の施策であり、生産額向上に貢献した個人や団体に贈られる賞。自治体からなどの推薦)を受賞し、県内外からも今後の取り組みに大きな期待が寄せられています。

 最初は自社の工場と本社事務所、直売所をつくろうと考えていましたが、2年前の「岩手・宮城内陸地震」によって栗原市全体がひどい打撃を受けていました。そこで、栗原地域全体を元気にしていこうと、漢方和牛の(株)ダイチ、飲食店経営の(有)ゑびすに加え、同じく栗原登米支部会員であるパン・洋菓子製造販売の(有)パレット、農産物の直売所「わくわく」、もち菓子製造販売の(有)もちっ小屋でんの5社で取り組むことにしました。

 出店に至るまではさまざまな問題も数多く抱えながら計画を進めていきましたが、最終的には各社の理念の部分でまとまれる土台がつくられました。これは同友会の学びがあったからこそできたのです。

栗原全域の農産物の販路拡大に取り組む

 「よさこい」オープン後、運営組合という任意組合の中で4人の経営者が、現状の分析、企画運営、今後の方向性について常に話し合いながら経営してきましたが、今年の3月末にLLP(有限責任事業組合)という法人登記を行い、一本化して経営を進めています。

 参加企業の商品だけでなく、栗原市の認定ブランドの商品化や、栗原の農産物の販路拡大・PR活動をいかに進めていくのかなど、栗原全域の農産物と関わりを持ちながら、より多くの人に商品を置いていただきながら、一緒に販路を拡大しようと行政とも一体となった取り組みを行っています。

 ホームページのショップも立ち上げ、自分たちの商品だけではなく、栗原全域の商品とも関わりを持ちながら取り組んでいます。

農商工連携で基幹産業としての農業の底上げを

農場

 「農商工連携」を「事業」とすると良いことばかりではありません。一見誰でもできるような気はしますが、農家や生産者と理念の中で合致するものがないとなかなか進めることはできません。「農商工連携」の認定をとったからといって、すぐ結果につながるわけではないと肌身で感じています。

 現在、食べ物が生活様式や家庭環境などを変化させている要因になっています。そのような中でも、地元で自分たちの目で見ながら安全で安心できる商品づくりをこれから進めていきたいと考えています。

 生産者は循環型農業にも取り組んでいます。漢方牛の堆肥を使った米づくり、米から地酒づくりやアスパラ、レンコン、たまねぎなどの商品もつくっています。肉だけではなく野菜も一緒に発信して、(有)ゑびすと(株)ダイチを通し、仕事を生み出していければ、基幹産業の農業の底上げが可能となり、元気な栗原をつくる足がかりを一歩一歩進めていきたいと思っています。

「地域と一緒に」社員も夢とやりがい

 (株)ダイチは、現在16人の社員がいますが、昨年の5月までは4人しかいませんでした。ほとんどが中途採用ですが、地域と一緒になった会社の取り組みは、社員からの評価もあります。さらに夢ややりがいを感じていただいていることもありますので、まだまだ課題は山ほどありますが、組織づくりを1つひとつすすめながら継承していきたいと考えています。

会社概要

(有)ゑびす(飲食業)
設立 2005年
資本金 300万円
社員数 36名
所在地 宮城県栗原市築館薬師
http://www.ebisu-gp.co.jp

(株)ダイチ(「くりこま漢方和牛」の加工販売)
設立 2005年
資本金 1000万円
社員数 16名
所在地 宮城県栗原市築館字照越永平
http://kanpogyu-daichi.co.jp

「中小企業家しんぶん」 2010年 9月 5日号より

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