厳しい時代を乗り切る強くしなやかな企業づくりを

1257社の「企業変革支援プログラムステップ1」回答結果から

 2009年に完成した「企業変革支援プログラムステップ1」(中同協発行、以下、「ステップ1」)は、発刊から約1万3000部が普及されました。各同友会では、同友会の活動の柱となる企業づくりの活動に取り入れ、支部例会のテーマ設定や経営指針成文化セミナー、小グループ活動に取り入れるなど、積極的に活用され、広がってきています。中同協では09年から11月を企業の健康診断月間として、「ステップ1」の取り組みを訴え、 e.doyuへの登録を促進してきました。これまでに1257社が回答を登録しました。この集計結果を紹介します。

 42同友会1257社の同友会会員が、1月26日までにe.doyu上に「ステップ1」の自社データを登録しました。

 昨秋からe.doyuのデータを携帯電話からも登録できるようになり、支部例会や説明会などでその場で登録する会員も増えました。

 なお、データは、2009年度(1~12月)回答データ612件、2010年度分846件を対象として分析し、年度登録がない場合は当該年の「本登録」を対象として集計に含めています。

 今回の登録結果を分析すると、次のような傾向のあることがわかりました。

 2009年度と2010年度の2年分の対比を行ったところ、カテゴリーごとの傾向に大きな差はありませんでした(図1)。

 全体では、成熟度評価(0~5)の平均は2・059から2・064と微増ですが、カテゴリー別にみると、「Ⅱ―(2)経営方針の策定」が2・ 5%、「Ⅴ―(3)間接部門(間接業務)サービスの運営」3・6%、「Ⅴ―(5)新事業(第二創業や業態転換などを含む)の取り組みへの仕組みと体制」 3・8%と若干上がっています。

 前年に比べ、方針策定の体制を整え、間接部門に目を向け、新事業の取り組みに足を踏み出す傾向が強くなっていることが伺われます。

 一方で、「Ⅳ―(3)顧客の満足度の把握」が2・5%、「Ⅴ―(1)製品やサービスの企画・設計について」3・2%下がっており、「顧客の満足度の把握」はもともと低い傾向のある項目だけに、先の新事業への取り組みとともに、体制の強化が期待される項目です。

 大項目の平均では「Ⅳ.市場・顧客及び自社の理解と対応状況」のみ前年より微減で、「Ⅳ―(2)苦情対応や顧客との関係強化」以外の3項目が前年平均を下回っています。

経営指針の実践状況の把握と新事業への体制が不十分

 2010年の回答の傾向をみると、以下のようなことが特徴です。

 カテゴリー別では、平均が高い順に、Ⅰ経営者の責任、Ⅳ市場・顧客及び自社の理解と対応状況、Ⅲ人を生かす経営の実践、Ⅱ経営理念を実践する過程、Ⅴ付加価値を高める、となっており、この傾向は前年と変わっていません。

 ⅡとⅤは平均で2を切っており、気づきの段階から抜け出せず、実践へのプロセスが求められるところです。

 個別項目では高い順に「Ⅰ―(4)自社の経営の主要数値の正確な把握」「Ⅰ―(3)経営者の自己変革」「Ⅰ―(1)経営理念の成文化と社内の共有」「Ⅳ―(2)苦情対応や顧客との関係強化」「Ⅰ―(2)社員との信頼関係の構築」。

 低い順に「Ⅴ―(5)新事業の取り組みへの仕組みと体制」「Ⅱ―(4)経営方針と経営計画の実行と評価」「Ⅴ―(3)間接部門(間接業務)サービスの運営」「Ⅳ―(3)顧客の満足度の把握」「Ⅲ―(2)共に学び共に育ちあう社風づくり」となっています。新たな事業展開に必要な要素でもある、経営指針の実践状況の社内での把握の体制が不十分で、顧客との関係強化や全社一丸体制に向けた社員教育が十分できていないことが伺われます。

経営指針を毎年見直すことで体制が確立

1257社について、経営指針の有無および経年変化(図2)により、一番大きな差があるのは「経営理念の成文化と社内の共有」で、「経営方針の策定」「経営計画の策定」の順となっています。

 期を重ねるごと、どの分野も成熟度が上がっていくことから、経営指針を成文化し、毎年見直すことで、企業として組織対応ができ、全社一丸の体制が確立しているのがわかります。

 しかし、期を経ても「Ⅴ―(4)取引先との関係強化」は伸び悩み、「Ⅴ―(5)新事業の取り組みへの仕組みと体制」も同様で、経営指針の見直しを図る際に、取引先との関係や新事業への取り組みを戦略的に取り組むことが求められています。

同友会運動に求められる企業づくり活動の柱

 同友会入会歴による経年変化(図3)では、入会してだんだん成熟度が上がっていくのがカテゴリーⅠ~Ⅲですが、ⅣとⅤは伸び率が低くなっています。

 入会して多くの会員が参加する支部の例会では、同友会がめざす企業づくりを学ぶ場として、実践に足を踏み出している会員の実践報告をもとに、経営課題を掘り下げ、本音で学びあう機会がつくられています。

 ただ、「経営指針を成文化しよう」「社員をパートナーに全社一丸の体制をつくろう」という部分での気づきは得られる状況にありますが、「市場をどう見るか」「お客のニーズを把握しているか」「付加価値を高めるために何が必要か」などの仕事づくりを課題とするアプローチも必要となっていることがわかります。

 厳しい時代に同友会で学び、強くしなやかに対応できる企業づくりをしていくためにも、さらなる「企業変革支援プログラム」の活用が望まれています。

(文責・中同協事務局次長 平田美穂)

「中小企業家しんぶん」 2011年 2月 5日号より