企業連携で新たな仕事・市場づくりを【中同協企業連携推進連絡会】

 2月9日に開かれた中同協企業連携推進連絡会では、2つの連携実践事例に学びました。連絡会代表である畑野氏の企業実践と福岡同友会企業連携推進委員会(FAST)の実践事例を紹介します。

理念の共有こそまず行動を起こそう

畑野氏

中同協企業連携推進連絡会代表 畑野 吉雄氏
(株)中央電機計器製作所社長(大阪)

 今の日本は、少子高齢化で全国的に経済活力が低下、販路縮小で売上減に泣いている企業が多くなっています。1月の中同協幹事会で鋤柄会長が「企業連携をもっと進めよう」と発言していましたが、企業連携=ネットワークづくりを展開することで販路が広がるのです。ネットワークは企業の大小、業種の違いはまったく関係ありません。信頼しあえる共通の理念が必要なのです。ですから、同友会のネットワークが今こそ求められているのです。

 私は連携の教訓を次の6点にまとめてみました。

 (1)思いを共有できる仲間であること、理念と人柄を重視する。
 (2)本業が元気なうちに行動する勇気が必要、一気に売上が伸びることは期待しない。
 (3)連携の基本は1対1、複数の連携も可能。
 (4)まず行動!自ら動ける人が連携に成功する。
 (5)連携は本業のサポート、差別化に特化する。
 (6)連携の成果はゆっくり現れるもの。

信頼できる同友会のネットワーク

 当社の連携の事例を紹介します。

(1)画像検査システム(寸法自動測定装置)の共同出展
 大阪同友会S社とは、10年来連携して、東京ビッグサイト「FPD展」に共同出展してきました。販売先、代理店(国内、国外)を紹介していただくのですが、実績は、年間1~2台売れて現在まで数千万円の実績をあげました。

(2)画像検査システムを中国に同行出張販売
 大阪同友会E社とは、中国へ同行出張し、海外企業とのコンタクトの仕方を学びました。実績は2年間で700万円の売り上げと中国人社員の採用につながりました。

(3)LED照明販売を全国の仲間の協力を得て
 神奈川同友会を訪問し、工事業の会員を紹介していただき、夜の例会にはゲスト出席しました。横浜市役所にもLED防犯灯でチャレンジ、入札にも参加しました。大阪同友会の仲間をはじめ、大分全研で紹介された北海道の会員、福岡の会員とも商談が実現しています。

 事業を長期にわたって伸ばしていくためには人材の確保と定着です。共同求人活動に参加し毎年新卒採用を続けてきました。今こそ採用の好機です。7年前にアメリカ人を採用したのを皮切りに、海外出張の激増に備えて、現在は外国人8名が働いています。

会社概要/創業1930年、会社設立1960年、資本金1000万円、社員数44名、事業概要・画像診断システム(寸法、傷、ゴミ)、電子機器開発、ソフトウェア開発、LED照明製造販売

FAST6年目 継続が実を結ぶ

伊藤氏

福岡同友会企業連携推進委員会代表世話人伊藤 裕一氏
伊藤建築設計事務所代表者(福岡)

 FAST(福岡同友会企業連携推進委員会)は、産学官連携による仕事づくりを目的に、2005年設立、会員は67名です。毎月例会を開き、畑野さんや北海道大学の荒磯先生を招き、全国の事例にも学びながら地元九州大学の湯本教授の支援も得られるようになってきました。

 緩やかな連携のネットワークですが、FASTを通してさまざまな情報、アドバイスを得ながら新商品開発をしていった4つの事例を紹介します。「継続が実を結ぶ」が6年目を迎えたFASTの教訓です。

(1)うなぎの焼おにぎり(焼セイロ) (有)味嘉(みよし)代表取締役 原 嘉法氏

 「うなぎを食べたい時に手軽に食べられる」ために「うなぎの焼おにぎり」を開発。米は地元の遠賀米、醤油は地元のオリジナル、うなぎは九州産で、おにぎりは手で握ります。製作即冷凍で味は変わらず、高齢者に人気を得ています。全国宅配を展開し、現在、月に1万8000個販売しています。

(2)蜂蜜ゼリー サン・フカヤ(有) 代表取締役 舩木 治氏

 喫茶店経営の中で、「べとつく蜂蜜を風味そのままに、食べやすく」するために、ジャムやゼリー状にすることに成功しました。

 蜂蜜は高齢者やスポーツ選手の栄養補給剤ともなります。蜂蜜ゼリーは、県中小企業振興センター経営革新センターや九州大学「開物成務塾」などの支援を受け、県産業デザイン賞奨励賞を受賞しました。3月から発売予定です。ジャムは、「ぷるぷるハニートースト」として喫茶店で提供中。

(3)自然薯(じねんじょ)おまかせとろろ (有)野菜王国 代表取締役 崎田正司氏

 本業は飲食店経営。「無添加の健康食品を食卓に」と、身体には良いが調理は大変な自然薯を、手間が省けるように、すりおろしてドレッシング状にしました。保存料を使わず、九州・沖縄の地場食材での商品化で、通信販売も手がけます。県や九州大学の支援も得て、県産業デザイン賞奨励賞を受賞しました。

(4)足場作業リフト「猿鳶太助(さるとびたすけ)」 (株)アイル 代表取締役 樋口康治氏

 建築現場の「荷揚げ作業の安全・安心」をはかるため、従来は人海戦術に頼っていた改修工事の足場材荷揚げ作業を、電動チェーンブロック式足場作業用リフトに転換。高さ30メートル、積載荷重120キログラムまで可能なシステムです。安全かつ作業効率アップで、30%労務費削減が実現しました。

 同友会会員の和新工業(株)と連携、経済産業省・国土交通省の新連携認定事業です。

「中小企業家しんぶん」 2011年 3月 15日号より