東アジア版中小企業憲章に向けてタイ・ベトナム「東アジア視察」【愛知】

【特集】中小企業と国際化 新たな連携と可能性を求めて

 めまぐるしく変わる経営環境の中、中小企業の海外展開に注目が集まっています。今回は愛知同友会と滋賀同友会が行った海外視察の様子を紹介します。

 愛知同友会では創立50周年を迎えた今年、外郭団体である愛知県中小企業研究財団主催でタイ・ベトナムを廻る「東アジア視察」を9月2~9日に実施しました。

 愛知、石川から13名の中小企業家と、渡辺俊三氏(名城大学教授)、黒瀬直弘氏(嘉悦大学教授)が参加したこの視察の目的は大きく次の3点にあります。

 第1は、グローバル化が進み世界が密接になるなかで、中小企業憲章を日本だけのものとせず、東アジア各国間の条約としていく可能性を探ること。第2は、東アジア版の中小企業憲章を実現するために互いに連帯し合う仲間探しをすること。そして第3は、タイ・ベトナムへのビジネス展開の縁づくりを図ることです。とりわけ、中小企業経営の在り方や中小企業の社会的・経済的役割について各国の中小企業経営者や行政当局者と交わした感触から、「中小企業憲章」を広げることの可能性を掴むことのできた旅となりました。

 タイでは特にローカルの中小企業において「中小企業憲章」の普及に大きな可能性を感じることができました。その要因は、納入先の日系企業からの厳しいコストダウン要請への対応と最低賃金の急激な上昇(対前年比30~40%)、支払いサイトの延長などの取引条件の変更などがあり、その打開策を現地の中小企業家が差し迫った課題として考え初めていることが挙げられます。

 対してベトナムでは、行政当局がとりわけ積極的な姿勢で私たちを迎えてくれました。訪問先では、EU小企業憲章と中小企業憲章草案や中小企業憲章とを比較した意見や、ベトナムが現在置かれている状況からくる問題意識を反映した改善案が出されました。さらに、現地の中小企業団体からは東アジア版中小企業憲章制定に向けて、具体的工程に乗って取り組んでいこうとの発言も出され、視察団自身が驚かされる場面もありました。

 こうした背景には、同国の大企業(国営)が昨今起こしているローカル中小企業との軋轢(あつれき)や、多額に上る無駄の多い企業運営に伴う信頼の減退、近い将来急速な成長軌道に乗ると予想される同国に於いて、今後目指すべき新たな産業構造モデルを模索していることなどが訪問を通して感じられました。

 10年前、愛知同友会創立40周年を記念して実施されたオランダ・ベルギーへの視察では「EU小企業憲章」と出合いました。今回の視察は、そこで得たものを基に取り組んできた私たちの運動の成果を、広げ伝える視察だったと言えます。そして何よりも私たちの運動の普遍性が証明された旅でもありました。

 東アジア版中小企業憲章制定に向けて、まだまだ克服すべき課題は多く、今回の視察の成果もささやかなものであったかもしれません。しかし、現在のグローバル化した社会を私たち中小企業が生き抜き、そして勝ち進む道が同友会運動にあることへの確信を大いに深めた視察となりました。

愛知同友会事務局 池内秀樹

「中小企業家しんぶん」 2012年 11月 15日号より