【地域と共に創る】本物の家づくりを目指す職人たちのグループの挑戦

 本紙では、複数の会員企業が連携して、新たな取り組みに挑戦している事例を紹介しています。今回は、大変厳しい地域や業界の中、「本物の家づくり」をめざして活動しているグループ「木の家を創る職人達」(京都)の取り組みを京都同友会経営研究集会第1分科会報告から紹介します。

植田板金工業(有) 代表取締役 岡本 康弘氏(京都)
真下塗装工業(有) 専務取締役 今井 一志氏(京都)

 「木の家を創る職人達」とは、暮らしと住まいをテーマに感動の家づくりをめざす職人たちのグループ。32社で結成され、うち12社が京都同友会会員企業です。

 同グループの母体になっているのは、(株)HORI建築(堀昌彦代表取締役、京都同友会会員)の協力業者の学びの会「HORI建築未来塾」です。「良品質施工」「現場きれい」などをテーマに2007年から毎月の定例会で研(けん)鑚(さん)を重ねてきました。

「労使見解」に学んだ「横請け関係」

 植田板金工業(有)代表取締役の岡本康弘氏(京都同友会会員)は、2011年より未来塾の会長に就任。毎月の定例会のテーマを自分たちで考え、報告も未来塾役員自らが行い、グループ討論も実施するなど、同友会の学びを取り入れた運営を実践してきました。そのような積み重ねの中、従来の元請けと下請けという縦の関係ではなく、「労使見解」(中同協「中小企業における労使関係の見解」)の精神を生かした共育ちを進め、「横請け」というパートナーシップの関係を構築してきました。今では、全国から同業者の見学が訪れるほどになっています。岡本氏は「ここにたどり着けたのも、毎月顔を合わせて討議したりする中で、チームで家づくりをしているということを実感することができ、また家の完成を心待ちにしているお客様のことを思うようになったから」と語ります。

 このような活動を土台に生まれたグループが「木の家を創る職人達」です。「暮らしと住まい」をテーマに、一生に1度のマイホームを建てる方、リフォームする方に後悔しない本物の家づくりを知ってもらうため、また、地域の企業と協力し合い、地域おこしにも取り組み、「幸せな社会づくり」の第一歩の運動をスタートしようと高い志を掲げ、家づくりをおこなう地元の企業・職人たちが手を取り合い結成したものです。

2000人が来場した住宅博覧会

 今年の4月には、「木の家を創る職人達」主催によりJR福知山駅前広場で「職人達が創る木の家福知山住宅博覧会」を開催し、2日間で約2000人の市民が参加、NHKテレビや各新聞でとり上げられるなど、大きな反響を呼びました。

 この「博覧会」の実行委員長を務めたのが、真下塗装工業(有)の今井一志専務取締役(京都同友会会員)です。「初めての取り組みで、当初はみな手探り状態で不安でいっぱいでした。しかし、実行委員会を重ねるごとに気持ちがかみ合っていきました」と今井氏は振り返ります。

 「博覧会」では、親子が本物の木を使って四畳半の家の枠組みを建てる「ちびっこ棟梁(とう りょう)」など、さまざまな「ものづくり」体験コーナーが人気を集めました。また商品展示ブースやフリーマーケット、「パワーショベルでスーパーボールすくい」などのイベントコーナーも設けられました。「地産地消・ウッドマイレージ(※)」「福知山の地盤」「本物の自然素材の家」など、6つのテーマでの講演会も開催しました。

 「福知山市の人口が8万人の中、2000人強のお客様に集まっていただけました。この地域にはこんな職人さんたちが家創りをしているのかと思っていただいたのではないかと思います。またイベントに来てくれた子どもたちの中から未来の職人さんが生まれたらと考えると、とてもうれしく思います」と今井氏。「地域の活性化があってこそ、地域に根づくわれわれ中小企業も活性化していくと強く強く思います。今後もこの取り組みを継続していきたい」と力強く語ります。

※ウッドマイレージとは、輸送時に排出される二酸化炭素量(ウッドマイレージCO2)を数値で示すことで、地域の木材を利用することにより地球温暖化防止対策を進める取り組み。

「中小企業家しんぶん」 2012年 11月 25日号より