同友会の縁でミャンマー進出-企業連携で海外事業開拓(石川)

 国際展開において「チャイナ・プラスワン」として近年ASEAN諸国が注目されています。その中でも今、最も注目されているミャンマーに民主化以前から会員同士が連携して進出している石川同友会会員の取り組みを紹介します。

 松多伸悟氏((株)アトラス社長/サービス業)は1996年からミャンマーに進出して16年になります。

 きっかけは1995年当時、アジア雑貨の輸入販売を手掛けていた松多氏がミャンマー人の友人から「ビジット・ミャンマー・イヤー」の話を聞いたことでした。これは翌年からミャンマーの観光が民営化されるということで、国を挙げて外国人観光客を呼び込むキャンペーンでした。

 しかし、観光客を呼ぼうにもさまざまなインフラが不足しているとのこと。空港からのタクシー台数も少ないということで、中古のタクシーを日本から輸出するアイデアを出しました。松多氏は日本で30台以上の中古タクシーを集め現地に送りました。同年、状況視察のため現地を訪れたところ今なら資本参加もできるという話を聞き、現地のパートナーと合弁会社の設立を決意。翌1996年にABCタクシー、ABCツアー、ABCパブレストランの3事業でABCグループとしてスタートしました。

 この取り組みを中心にした松多氏の支部例会報告を聞いた木村竹芳氏((株)北陸サンライズ社長/印刷業)は興味を持ち、すぐに松多氏を頼って現地視察に行きました。

 視察のなかで印刷会社に行ったところ、技術も含めて自分の創業からの経験が活かせること、日本ではとっくに現役を引退するような機械が現地では最新式になること、何よりミャンマー人の勤勉で温厚な人柄に惹かれ進出を即断します。

 1998年、松多氏のABCグループで印刷部門を設立しました。また、石川同友会の国際ビジネス研究会のメンバー13名で視察旅行に行き民間交流もスタートさせます。その後、このメンバーが中心になって石川ミャンマー友好協会を設立しました。

大切なのはきめ細かな交流

 2002年には同友会のメンバーも多数参加して石川県から80名規模の視察団でミャンマーを訪れ、ミャンマー政府関係者や在ミャンマー日本大使も出席して盛大なレセプションを行うなど交流を重ねてきました。

 14万人以上の死者・行方不明者を出したと言われる2008年5月のミャンマーサイクロン被害では、同協会と石川同友会国際ビジネス研究会の有志で復興支援活動に汗を流しました。木村氏は「同友会の縁でミャンマーに会社をつくり、現地の従業員も70名になった。同友会でも同じだが、自分の商売のことだけでなく、きめ細かな交流を重ねてきたことが、今につながっている」と振り返ります。

 松多氏の30数台で始めたタクシー会社は100台近くにまで成長しました。「あくまでも日本の本業ありきだが、今年から農業分野にもチャレンジしている。海外であれば資金や人材の面で中小企業にも新しいことにもチャレンジしやすい環境がある」と語りました。

 木村氏は2013年2月14~15日に行われる第43回中小企業問題全国研究集会(福岡)第9分科会の報告者です。

「中小企業家しんぶん」 2012年 12月 25日号より