第4回 企業変革支援プログラムと中小企業振興基本条例をサポートする「エコノミックガーデニング」

【地域活性化の鍵~中小企業の元気】(拓殖大学政経学部教授 山本尚史)

 中小企業振興基本条例、企業変革支援プログラム、エコノミックガーデニングに焦点を当て、地域経済と中小企業との関わりについて考える連載の第4回。今回のテーマは「企業変革支援プログラムと中小企業振興基本条例をサポートする『エコノミックガーデニング』」です。

 久しぶりに、地元で革新的な縫製業を営む社長さんとお会いしています。

 「やあ、若先生、ご無沙汰だね。私も支部で政策委員の1人になったよ。最近、同友会全国協議会事務局の人から『エコノミックガーデニング』のことを聞いた。『安上がりの庭園作り?』と思っていたけど違うそうだね。そのガーデニングを研究している人は日本でも少なくて、若先生がその1人だそうじゃないか。若先生、エコノミックガーデニングって何なの?」

―「エコノミックガーデニング」は、1990年代に米国のリトルトン市で始まった手法です。地元の中小企業の製品開発やマーケティングを支援することで企業の成長と繁栄を促し、地域経済を豊かにする、という狙いを持っています。

 エコノミックガーデニングは米国生まれの手法ですが、その手法を日本の現状に合わせて応用することができると思います。この点について、もう少しお話ししましょう。

 30年後の地方経済を考えるとき、自分の住む街が財政破綻してしまったり誰も住まなくなってしまったりという事態にはなってほしくないです。地域経済が、これから予想される変化に適応できる力をつけるには、地元の中小企業が、コスト削減のために地域外に転出したり省力化・機械化を進めたりするのではなく、地域内で雇用を作り続けること、つまり、経済原理にも社会原理にも基づいて行動することが大切です。

 そのためには、地域内連携で「経営者を育てるシステム」をサポートするという、これまでにはなかった仕組みが必要です。企業変革支援プログラムをしっかり実施すれば、地方中小企業の「中心的な技術者や技能者や職人」が本当の「経営者」になるでしょう。

 私は、「エコノミックガーデニング」が、企業変革支援プログラムのステップ2で「Ⅳ.市場・顧客および自社の理解と対応状況」や「Ⅴ.付加価値を高める」の箇所を実践する上でサポートとなる、と思います。

 また、中小企業振興基本条例を制定する過程では、具体的な施策をどのように作り上げるかが課題になっていますが、エコノミックガーデニングが、条例で掲げる理念を実現する「技」であると思います。

―ある地域経済活性化の研究者は、伝統行事から学べる地域経済活性化のポイントが多数あると指摘しています。経済性と社会性を両立させる方策には、必ず地域に住む人のプライドを刺激する仕組みが存在するのだそうです。

 「なるほど、力強い地域経済を未来に残すには、地元の人々のぶれないコミットメントが必要だね。これは行政任せではできない。これからは経済団体の優秀性が地域の命運を決めていくことになるね。政策委員として、これからもがんばるよ」

「中小企業家しんぶん」 2013年 8月 5日号より