【消費税引き上げ迫る】自社の強みを生かし、全社一丸での対策を

 2014年4月から消費税が現在の5%から8%へと引き上げられ、中小企業を取り巻く経営環境は一層厳しさを増すことが予想されます。中同協では「消費税増税を控え、早急に自社経営の点検と対策を」として消費税対策を呼びかけています。また今回は中同協税制プロジェクト委員の長谷川元彦氏より対策についての具体例を紹介します。

消費税増税をひかえて

税理士法人 第一経理 埼玉事務所長
中同協 税制プロジェクト委員 長谷川 元彦氏

転嫁が今年最大の経営課題

 今年の4月の消費税増税は、「転嫁」が経営上の最大の課題と言えます。転嫁について、簡単なシミュレーションを見てみます。

 ケース(1)は、売上、仕入れの取引が完全に外税で転嫁できる場合を想定しています。8%への引上げ後でも、利益が300万円確保できています。消費税分の50万、80万円を売上として頂いているからです。

 ケース(2)は、取引を「税込み」で行っている場合です。売上の消費税は自分が、仕入れの消費税分は仕入先に負担をさせていることになります。結果として納税分だけ利益を減らしていることになります。

 ケース(3)は、多くの中小企業が該当する問題かと思います。売上先は消費者で、消費税分を今でも転嫁できていない。しかし、仕入れは大手のメーカーであり、消費税分はしっかり転嫁されてしまっている。仕入分の消費税と納税分を自ら負担してしまっているので、今でも48万円利益を削っている。8%になればさらに26万円利益を減らすことになります。

 自分の会社の取引は、どのケースに近いでしょうか? 価格決定権を持つ強い商品を持っている会社は(1)に、業界の動向に流されて、価格競争にさらされている会社は(3)に近いのではないでしょうか。

 年末から、大企業の転嫁についての方針や、4月の対応について、少しずつ報道がされています。自社を巡る業界動向は、ぜひ知っておきたいことです。

売上を落とさず利益を上げる

 消費税の転嫁ができたということは、同じ商品で3%売上を増やすことです。価格転嫁だけを一生懸命考えて、値札を張り替えても結果として売上を減らしたのでは、経営を守ることはできません。

 対策を実施している同友会会員の飲食店経営者を紹介します。消費税増税を、経営を見直す最大の機会と捉えて、メニュー、売り方を変更しました。最大のテーマは「自社の強み」を生かすことです。

 指針セミナーで学び、自社は「食べ物」ではなく「食べ方」を売っていると考えていました。今回の変更は、商品を知ってもらうメニューと、ディスプレイを中心に変更したということです。商品知識を多く表示し高級感をかもし出し、少し量を減らして価格を抑え、利益率の確保をしました。

 安く大量ではなく、食べ方を売っている、この付加価値を追求したということです。年末から、お客様の反応を見ながら、メニューの調整をしています。

 ケース(1)の紹介の中で少し触れましたが、価格決定権を持つ商品であれば、「転嫁」と「売上確保」が追求できる可能性が広がります。自社の強みを最大限に生かした商品、サービスを作り上げること、自社の存在価値を高めることが消費税増税の最大の対策です。

「中小企業家しんぶん」 2014年 1月 15日号より