第1回 「でんさい」とは

 新たな金銭債権である電子債権の利用が広がっています。今号から(株)全銀電子債権ネットワークの協力により、同社が取り扱う電子債権「でんさい」の特徴や仕組みなどについて連載します。

「でんさい」とは

 「でんさい」とは、(株)全銀電子債権ネットワーク(通称「でんさいネット」)が取り扱う、電子記録債権のことをいいます。

 電子記録債権制度は、事業者、特に中小企業の資金調達の円滑化などを図るために創設され、手形・指名債権(売掛債権など)の問題点を克服した新たな金銭債権として設計されています(手形・指名債権を電子化したものではありません。)。

 でんさいネットは、一般社団法人全国銀行協会100%出資の電子債権記録機関として、2013年2月業務を開始しました。

 電子債権記録機関とは、電子記録債権の記録原簿を備え、利用者の請求にもとづき電子記録や債権内容の開示を行なうこと等を主業務とする、電子記録債権の「登記所」のような存在であり、主務大臣の指定を受けた専業の株式会社です。

でんさいネットの特長

 でんさいネットには、3つの特長があります。

 1つ目は「手形的利用」です。でんさいネットでは、中小企業の資金調達の円滑化に資するため、最も汎用的と考えられる現行の手形と同様の利用方法を採用しており、また、手形の取引停止処分制度と類似の支払不能処分制度を整備しております。

 2つ目は「全銀行参加型」です。でんさいネットは、2014年4月1日現在、全国の銀行、信用金庫、信用組合など486金融機関でご利用いただけます。また、既存の銀行間の決済システムを利用し、確実に資金決済できる仕組みを提供しています。

 3つ目は「間接アクセス方式」です。でんさいネットは、金融機関を経由してでんさいネットにアクセスする方式を採用しており、利用者は現在利用している金融機関をそのまま利用できるほか、複数の金融機関で利用することもできます。

「でんさい」のメリット

 支払企業(債務者)のメリットとしては、手形の発行など、支払いに関する面倒な事務負担が軽減されるほか、手形の搬送コストや印紙税負担を削減できることがあります。また、支払先に応じて、手形や振込、一括決済など、複数の決済手段を用いていた場合、一本化することで事務の効率化を図ることもできます。

 納入企業(債権者)のメリットとしては、手形での受取に比べ、ペーパーレス化により紛失や盗難のリスクがなくなるほか、保管コストを削減できること、割引や譲渡により資金化する場合、必要な資金の分だけ分割譲渡できることがあります。また、受取は口座間送金決済で自動的に口座に入金されますので、取立手続は不要です。振込と比較すると、売掛金の資金化が容易になります。

 次回は、「でんさい」の利用申込みや取引の流れについて説明します。

(株)全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)

「中小企業家しんぶん」 2014年 4月 15日号より