毎年診断を続けることが重要 細川コンクリート工業(株) 代表取締役 細川 篤(大阪)

【変革への第1歩~活用しよう企業変革支援プログラム】42

初めての円グラフにはサボテンのようなトゲがあった

 私は、2009年に4代目代表取締役に就任した。同じ時期に同友会では、企業変革支援プログラムが発売された。初めてできた円グラフは、サボテンのようなトゲがあった。

 社長になり1年目、会社は不景気の真っただ中。売上の低下、業務縮小、社員の退職と悪循環を繰り返していた。先代から引き継いだ経営計画書は、なんとか社長1人で作成して全員に発表していた。1人で作成する計画書は力がなく、1年間開かれることはほとんどなかった。

 社長になり2年目、同じことを繰り返していた。発表する経営計画書は、1日前に作成。大部分が一夜漬け。目の前の業務に追われる毎日が続いていた。会議は、社員の愚痴合戦。何も決まらないまま、毎月2時間以上やっていた。そんな時、社内トラブルが起こる。幹部からは、「社長が何を考えてるのか分からん。社長の思いを聞きたい」と言われ、経営に対する思いの弱さを痛感した。不安で仕方なかった毎日。業績不振と社員の退職。サボテングラフの凹んだ部分が課題に変わっていった。先代の真似事、小手先の経営ではだれもついてこない。会社の転換期だった。

転換期=社内がどんどん変わっていく

 3年目が始まる前。この年、「みんなと一緒に経営する」ことを強く考えていた。私にとっては、壮大である。「やるしかない!」。思いは強かった。業務の合間にできた時間を使い、みんなで集まり、来年の計画を何度も話しあった。それぞれの思いを成文化して3年目をスタートさせた。

 会議では毎月経営計画書を開き、各役割担当が進捗を報告する。進捗が遅れている部署には、フォローをどうするのか検討する。会議終了後には、全員でフォローする。活動を進め、結果が良くも悪くも進めていくことに集中した。すると、愚痴が無くなった。社内はどんどん変わっていく。良くなっていく反面で、採用したアルバイトはどんどん辞めていく。まだ何か足らない。サボテンの円グラフは、丸みが出て整ってきたのに…。

 同友会の先輩経営者に、「義務でやってる間は、まだまだやなぁ」とよく指摘される。経営計画書の作成時に毎年社員に書いてもらっていた「5年後の夢」も、「義務」だと言われた。

全員から将来の夢を聞く

 4年目、「5年後の夢」を止めてみることを決めた。専務からは、書くことは大切だと、強く反対をされた。夢を捨てるのではなく、「義務」を取って「夢」を経営計画書に反映させるからと説得した。

 この年から年末に社員全員と面談を実施した。聞きたいことは、夢である。「将来どんな会社になりたい?」と聞いてみた。みんなから、言われたことをまとめると、(1)仕事を通じ成長できる会社、(2)効率よく残業のない会社、(3)何でも言いあえる、フォローしあえる会社、(4) 他社から見学にくる会社、(5)楽しい会社、の5つにまとめられた。

 4年目の経営計画書の作成にあたり、夢を強く意識しながら、活動方針・活動計画を各役割担当で考えた。この年からは、ワクワク感を持って作成することができた。会議もワクワク感がある。会議は、コンパクトにスムーズだ。なぜなら、計画以上のスピードで実行されていくからだ。社長4年目で、初めて社内が充実してきたと感じられる1年になった。

 今では、企業変革支援プログラムの診断結果は、年々丸みが出て、大きくなっている。課題を解決させ、ステップアップしているからだと思う。最初の数年は何のための診断だろうかと思っていたが、毎年診断を続ける必要性がやっとわかってきた。今では、数年分のグラフをならべ、自社の変化・自分の心境の変化を見て、次へのステップにつながっている。

(大阪同友会機関紙「OSAKA中小企業家」2014年6月号より転載)

「中小企業家しんぶん」 2014年 7月 5日号より