夫婦二人三脚社長の『思い』を店作りに (株)有喜屋 専務取締役 三嶋 一枝氏(京都)

魅力あるお店づくりは「ありがとう」のシャワーで 「京都で一番のそば屋をめざす」を夢に

三嶋専務

 今年で創業85年。店舗は京都市内に6店舗、名古屋、大阪に1店舗ずつ、岐阜に一番弟子ののれん分け店があります。

 社長である主人とは高校時代からのお付き合いです。主人は高校卒業後に後継者として経理の専門学校を出た後、東京の蕎麦屋に3年間の丁稚奉公に行き、京都に戻ってきて23歳の時に結婚。

 当時、信用金庫への300万円の借入の申し込みを断られ、「絶対に銀行から『借りてください』と言われるくらいの店にしよう」と思い、それまでの機械打ちのそばを手打ちそばに変え、「京都で一番のそば屋を目指す」夢が始まりました。

同友会とのであいと2度の危機

 2002年に私が社長の代わりに同友会に入会しました。当時はほとんど参加せずにいました。ところが2005年、組織経営を知らない私たちは問題に直面します。一番弟子が独立した翌年から、夫婦だけでは全店に目が行き届かず、会社の未来など不安の声が広がり、店長クラスの社員が辞めてしまったのです。

 この時、同友会で学ぶ決心をしました。経営指針作成の勉強会「人を生かす経営」実践道場にも参加し、初めて経営者としての責任の重さを学びました。

 夫である三代目社長の思いを私が文章にしなければと気負い、社長とは口論ばかり。しかし、私の思いだけの経営計画書ではいけないと指摘され、「自分の頭の中にある」という社長の『思い』を少しずつ聞き出し、2人が目指す方向がはっきり見えてきました。3期目くらいから少しずつ社員も加わり、指針書の役割が明確になってきました。

 さあこれからという時、社長に脳動脈瘤がみつかりました。ちょうど経営指針発表の時でしたが、しばらくの休養宣言をしました。

 その時二番弟子の幹部が、「経営指針があるから大丈夫です! 社長の思いはわかっています。」と言ってくれました。本当にうれしく、同友会で指針書をつくって助かったと思った瞬間でした。

支部長を経験して

 昨年度まで2年間支部長を務めて気づくことがありました。自分が副支部長の時にやってきたことは「みんなもやって当たり前」と思っていた面もあり、幹事や副支部長との間に隙間を感じ悩んでいました。「会議や例会に参加してもらうだけでもありがたいと思っているか」と社長に言われ、ハッとしました。「ありがたい」という感謝の気持ちを先に言うと、ギクシャクした自分自身の心が解けていくのが分かりました。

 これは社員教育にも生かせると考え、社員や家族に対して「いつもありがとう」と伝えることの大切さを伝えています。

 「当たり前」「ありがたい」「ありがとう」の順番を変えると気持ちも変わります。「ありがとう」のシャワーが飛び交う店をこれからも目指していきます。

これからも夫婦二人三脚で

 有喜屋に嫁いで34年、京都で一番のお店になることを夢見て頑張ってきました。夫婦二人三脚、些細なことで喧嘩をし、時には同志として経営について、会社の未来について語り合っています。私が経営について語り合えるようになったのも、同友会のおかげです。

 取り組んでいることは後継者問題です。8店舗のそば屋を継いでくれる形態へとシフトをして行く方法を考えています。できないことを考えるのではなく、できることを考えることの大切さをいつも話しています。まだまだ課題はいっぱいありますが、前へ向いてチャレンジするのみ。これからも夫婦仲良く頑張っていきます。

 第17回女性経営者全国交流会第6分科会報告より

会社概要

創立:1929年
社員数:174名(内パート・アルバイト150名)
資本金:1000万円
年商:4億3000万円
事業内容:そば料理店
URL:http://www.ukiya.co.jp

「中小企業家しんぶん」 2014年 12月 5日号より