これが私の生きる道中小企業家としての私の使命 (有)マキプランニング 代表取締役 石川 眞樹氏(茨城)

【Women!~輝く女性経営者!】

(有)マキプランニング 石川 眞樹氏

将来のビジョンもないままの法人化

 開業して3年後、事業計画も資金繰りもないまま、法人化をすることになり、社員を雇用しました。社員と会社のために奔走する毎日。多忙を極め、心身ともに限界の中で、私の設計が大クレームを出してしまいます。事業の中心であった取引を停止され、会社存続の危機に立たされました。どうしていいか分からず、会社を辞めてしまおうか、と考えている時、先輩経営者に相談に行きました。ピンチを打開する「特効薬」を期待して行ったのに、経営理念のことを懇々と説明されました。

理念との出合い

 理念を創る作業は大変なものでした。本当の自分を掘り起こし、導き出す作業。自分には経営者としての覚悟がなかったことを思い知りました。

 悪戦苦闘する中で、「会社は社長がワクワクすることをしなくちゃだめだよ。自分の会社でしょ」。同友会の仲間の言葉が背中を押し、出合った本の中の一文が自分の理念を見つけてくれました。 それは「蒔いた種通りの花しか咲かない」というものです。私の仕事はモノづくりの最初の段階、それができることでお客様の笑顔を生み出せる。こんな素晴らしい仕事はない。図面の1枚1枚に1粒ずつ、幸せの種を蒔いていこう。私の存在意義はみんなに幸せになってもらうことだ。そう気づいて、理念が出来あがりました。

 2010年、新規事業としてガーデン雑貨のお店を立ち上げました。コンセプトは「母」。主婦や母である女性に、社会とのつながりを持ってほしい、という思いからでした。理念ができて、自分は人様のおかげで生かされているということに気づきました。

東日本大震災を経ての原点回帰

 オープンから8カ月後の3月11日、東日本大震災が起こりました。

 猛烈に忙しくなり、店の中に目を向ける時間がなくなっていました。そんなある日、スタッフから「会社の方向性が見えない」と言われてしまいます。会社は理念を旗印にわかり合っている、と自分だけが思い込んでいたのです。

 そんな時に同友会の経営指針おさらい受講の案内。カリキュラムの中に「10年後のある1日」を物語にして書く、というものがあり、その物語にスタッフを登場させました。生き生きと働いている姿を描き、その物語を読んでもらいました。夢とビジョンを明文化し共有することで、スタッフも実際にいきいき働いてくれるようになりました。

 私自身、震災後は目の前の仕事をこなすのが精いっぱいになり、お客様の要望に全力で応えられなくなってしまっていたのです。私は本質的なことを忘れ、会社の都合でみんなを振り回してしまっていました。自分と関わる事でみんなを幸せにしたくて経営してきたのだから、原点に立ち返ろう。忙しさでぶれていた自分に叩きつけたバイブル、自分の使命を思い出させてくれたもの、それが経営理念でした。

これが私の生きる道

 今年の4月、ひたちなかまちづくり株式会社が誕生しました。ひたちなか市の街の魅力を伝え、市民にも誇れる街にすることがこのまちづくりの目的です。私は環境事業に属し、花と緑にあふれるきれいなまちプロジェクトを推進しています。自分の仕事を生かしてまちづくりに貢献することで、本業にもますます力が入り、スタッフとの潤滑油にもなり、また、新たな役割を与えていただくことにもなりました。

 私の生きる道。この先、どんな道だとしても、みんなが幸せになってくれるように、これからも幸福の種を蒔いて、花を咲かせていきます。

(第43回青年経営者全国交流会 第11分科会報告より)

「中小企業家しんぶん」 2015年 11月 5日号より