【次代のリーダーへ】社員と共に日本一の看板屋をめざす!

(株)ブンカ巧芸社 代表取締役社長 峯元 信明氏

(株)ブンカ巧芸社 代表取締役社長 峯元 信明氏(鹿児島)

 物心ついたころから父の会社を継ぐんだという気持ちで、大学を卒業後、3年間福岡の建設会社に勤め、2004年に専務取締役として入社しました。入社当時は、売上も右肩上がりで、3年後には、最高売上を計上。その時父に「5年後35歳になったら社長交代だ」と言われ、「もっと大きな会社にするぞ!」という思いでした。

 しかし、翌年リーマンショックの影響もあり、仕事は激減。給与・賞与カットも行い、一番残ってもらいたい社員も辞めてしまいました。これまでも社員の定着率が悪く、営業と工場は、責任の押し付け合いで、助け合う風土もありませんでした。

自分たちの会社は、自分たちで良くする

 父は、今のブンカ巧芸社の強みでもあるワンストップ体制を作り上げた人です。力強くみんなを引っ張る、いわゆるトップダウン。私は、石橋を叩いて渡る慎重派。私ができることは、社員がいきいきと働き、個性と能力を惜しみなく発揮できるボトムアップの会社へ変革することだと考えました。

 まず取り組んだのは、5つの社内委員会活動です。(1)自分たちの会社は、自分たちで良くしよう。(2)役割が人を育てる。(3)すべて部署の連携のもと、1つの看板が完成する。活動の目的は、これらのことを伝えるためです。

 最初は社員の反応は悪く、委員会の集まりも持たない、意見も出ない。でも私は、小さな意見にも耳を傾けることから始めました。出てくる意見は福利厚生面ばかり。でも、できることは即実行しました。自分たちの声で会社が動いた事実は少しずつですが、社員を動かしてくれました。

 そんな時に、(株)山田製作所(大阪同友会)の「徹底した3S活動」を同友会で学び、社員と共に見学に行きました。かっこいい工場をつくりたい!そんな社員がぞくぞく出てきました。さっそく、工場の整理・整頓・清掃に取り組みました。社員を巻き込み、自分たちの会社は、自分たちの手で良くしていこう!と声を張り上げてきた成果をここで得ることができました。

社長を真剣に意識したこと

 2011年12月、父がリンパ癌との告知がありました。新年恒例の全体会議で、いつものように父はあいさつ。当然、私も父や社員を不安にさせないためにも、力強くあいさつするつもりでした。しかし、喋り出そうとすると、手が震えました。これまでの取り組みは、父の支えがあったからこそ、失敗を恐れずに、全力で実行できていたのだと思いました。

 私の舵取りで社員60名、その家族や取引先を路頭に迷わすわけにはいかない。いろいろなことを考え、声を出すことができませんでした。不甲斐ない自分を自覚し、会社を背負う重圧を感じた瞬間でした。

人が成長できる会社へ

 社員の成長があってこそ初めて会社は発展すると考えています。新卒採用を開始したのは、2012年。こんな看板屋ごときに、学生たちが集まるのか半信半疑でしたが、数名来てくれました。説明も真剣に聞いてくれました。また、自分たちの会社のことを、一生懸命説明してくれる社員にもうれしさを感じました。

 結果3名の学生を採用し、「新卒用共育マニュアル」も作成しました。新入社員は、一生懸命学ぶ努力をし、また、教える側も、もっとわかりやすく説明しようと準備してくれました。現在では、新卒採用・「共育」は、社員の成長・会社の成長に不可欠なものになっています。

日本一の看板屋をめざして

 5年後の理想像として、「めざされる看板屋でありたい」と考えています。夢と誇りを持って、信頼し合える仲間と共に一人ひとりが笑顔で活躍できる会社でありたいと。

 最後に、今年入社したある社員の話をします。ものづくりがしたいと入社した彼女は先日の新入社員研修で、「私の会社は、日本一の看板屋をめざしています。そのように、熱く語る社長を、尊敬しています。入社まもない私ですが、この会社で、日本一の工場長をめざしたいと思います」と力強く発表してくれました。私は、そんな社員たちと夢と誇りを持って、一人ひとりが笑顔で活躍できる会社へさらなる成長をめざしたいと思います。

第43回青年経営者全国交流会第4分科会報告より

会社概要

創業: 1953年
資本金: 2,000万円
社員数: 60名(うちパート7名)
事業内容: 各種看板、各種イベント、店舗内外装の企画・製作・施工
URL: http://www.bunkakougeisya.jp

「中小企業家しんぶん」 2016年 1月 15日号より