【採用と教育】第3回 「顔の見える採用」、個人面談を重視

NPO法人 家族支援フォーラム 理事長 米田 順哉氏

NPO法人 家族支援フォーラム 理事長 米田 順哉氏(愛媛)

 「採用と教育」をテーマに各社の取り組みを紹介する連載の第3回。今回は、NPO法人 家族支援フォーラム理事長の米田順哉氏(愛媛同友会副専務理事)に、自社と同友会での取り組みを聞きました。

 当法人では、知的障がいのある方、発達障がいのある人の地域生活支援を行っています。障がいのある人の豊かな地域生活を生涯にわたり実現していくことを理念の柱としています。

 現在、障がいのある方が働く飲食店(4店舗)や清掃事業の経営のほか、グループホームの運営、ショートステイ、子どもを対象とした療育の事業などを行っています。職員は37名で、うち19名が正職員、18名がパート職員です。

 当法人では、社会福祉士を目指して学校に通っている学生の実習を受けいれ、その中から当法人の理念に共感し、就職したいという人を採用してきました。

 私が特に重視してきたのは「顔の見える採用」です。つまり実習をする中で、お互いによく知り合い、合意と納得と共感の上で採用したいと考えたからです。採用基準は1つで、上からの目線で指導する人ではなく、障がいのある人に、同じ高さの目線で寄り添える人ということです。

 これまではそのような方法で何人も採用し、特別に募集をする必要はありませんでした。しかし昨年から人手不足で採用が難しい状況になりつつあります。愛媛同友会では、会社の未来を担う人材を採用し、地域の雇用をつくることをめざして共同求人活動に取り組んでいます。私も準備会から委員として関わっていますが、共同求人活動にもより積極的に参加していきたいと考えています。

 社員教育はOJT(日常業務を通しての教育)が中心です。人事評価システムを取り入れていますが、その一環として半年に1度全職員と行う個人面談が教育の場にもなっています。面談は当初、評価を行い給与を決めるということが主でしたが、今では面談で悩みなども含めていろいろ話をすることに意味があると感じています。

 2年半前、当法人が経営危機に陥った時、「職員全員が力を出し、職員が運営の主体者として参画するためには何が必要なのか」という議論もこの面談の場で行いました。今では、課題を抽出して全職員で共有し、次期の経営指針に反映させる場としても機能し、PDCAサイクルがなんとか回るようになりました。

 研修としては社内研修を毎月行うとともに、同友会の合同入社式や新入社員研修、中堅社員研修、同友会大学などにも積極的に社員が参加しています。福祉の世界はどうしても閉鎖的になりがちなのですが、異業種の方との交流の中で視野が広まるなど、貴重な機会となっており、社員の成長と発達を保障する同友会の社員研修は大変ありがたいと感じています。

 愛媛同友会では、「人を生かす経営」を「『労使見解』の精神を生かした経営指針を確立し、社員教育を進め、障がいのあるなしに関わらず、求人を行う経営」と定義づけています。「人を生かす経営の総合実践」とは「人を生かす経営を、産官官報金学連携の枠組みで、条例制定運動を通して、地域と企業で実践する」ことと位置づけて総合運動を進めています。私もこの「総合実践」をめざして今後も取り組んでいきたいと考えています。

「中小企業家しんぶん」 2016年 1月 15日号より