新聞で地域の子どもたちに教育活動 (株)エヌ・アイ・エス 代表取締役 能登 昭博氏(千葉)

(株)エヌ・アイ・エス 代表取締役 能登 昭博氏

 日本新聞協会の「地域貢献大賞」を(株)エヌ・アイ・エス(能登昭博代表取締役、千葉同友会副代表理事)が受賞しました。(株)エヌ・アイ・エスの地域での教育活動について聞きました。

 千葉県の白井市を中心にする新聞販売店を行っています。

 インターネットの普及もあり白井市では1997年ごろから急激に新聞を購読する家庭が減少しました。そのことで真剣に新聞の商品価値について考えました。また当時は景品と一緒に新聞購読者を獲得する訪問トラブルなどが増えたため、業界全体も印象は良くありませんでした。

 千葉同友会で行われている大田堯・東京大学名誉教授との共育懇談会に参加し、「物欲を刺激することは人間性を否定し、品位を下げる」という言葉に衝撃を受け、景品を用いた営業からCS活動を中心とした営業に変更しました。社員からは「なぜ景品で簡単に営業しているのを止めるのか」という声もありました。1995年から経営指針の成文化を進めていましたが、社員との「物欲ではなく理性に訴えかける営業活動」との刷り合わせが一番重要であったと思います。今では社員一人ひとりが個人目標を掲げ、お花を用いた営業や各種のイベントでCS活動を進めています。

 同友会大学の委員長を務める中で一番関心を持ったのが子どもの教育問題です。国から「グローバル化に役立つ人材を育てる」という目標のもと実用日本語を学ぶ学習指導要領が発表されました。思いを的確に伝える実用日本語が使われているのが新聞と示されたのです。

 改めて新聞の商品価値の1つを「言葉を学ぶ教材」としました。新聞が読めるとは語彙を理解することとそこから自分自身で考えるという2つの側面があります。新聞には教育のレベルを高める学習機能があるのです。

 まず、2006年に「ASA子ども元気塾」として、スクラップ講習会などを小・中学生を対象に開催しました。2012年からは「ジュニア記者クラブ」として全10回の講座を開設し、子どもが主体的に動き自分の表現で新聞を制作する記者体験を実施しています。千葉県立中央博物館の見学、野球やサッカーチーム、バスケットボールなどのプロスポーツ選手へインタビューができ、作成した文章はOB記者や現役の朝日新聞千葉総局長などが添削・指導しているので、文章力が身につきます。

 学校とは別の企業による学習の場があっても良いと思っています。社会体験が不足がちな子どもたちが取り組みを通して刺激を受けて学ぶ意欲を育んでくれればと思っています。

 私の目指す企業像は新聞をもとにした「情報総合サービス業」です。子ども記者体験は新聞社やスポーツ業界など多方面に関係を持てる新聞販売店ならではの企画です。さらに発展したものにして、地域の教育に少しでも役立てたらうれしいです。

「中小企業家しんぶん」 2016年 2月 15日号より