よい企業と子宝率

 2012~2014年までの2年間にわたって、横浜国立大学大学院国際社会科学研究院の相馬直子准教授たちの研究グループが6歳未満の子どもを持つ母親を対象にダブルケア(介護と子育ての両立)に関する調査を実施しました。1894名の回答を集計・分析したところ「現在直面中」が約7.9%、「過去に直面していた」が約6.3%、合計すると約14.2%の母親がダブルケアを経験しています。従業員のメンタルヘルスも大事な上に、家族構成もきちんと把握しておかないと介護離職増加の恐れを感じさせるデータです。

 一方で(一財)操風会岡山旭東病院の土井章弘院長(岡山同友会会員)が「職場環境改善に努めている中で、自社の看護士は平均で子どもが1.99人とわかり、改善成果が出ています。職場環境を良くすると少子化を防げる」と言われています。よい会社の条件には社員の子どもの数も該当するかもと調べてみると、(株)東レ経営研究所の渥美由喜氏が提唱し、自治体が子宝率を調査してモデル企業を紹介しています。

 2011年から全国に先駆けて福井県が企業の合計特殊子宝率(愛称:企業子宝率)の調査を行い、2014年鳥取県、山梨県、滋賀県、2015年から佐賀県と三重県が実施しました(2015年静岡県は表彰)。企業規模別に発表している4県を見ると、企業規模が小さいほど子どもが多い結果です(表1)。しかも最高値比較や上位5社比較ではさらに明白です(表2)。規模別子宝率では、滋賀県だけ例外ですが、回答76社で100人以上が7社だけですので上位5社分のみで見たほうが正確と思われます。地域の危機である少子化を防ぐ企業の貢献として、労働環境を良くして社員の子どもの数が全て2.1人以上になるようであれば良い企業指標になると思いますがいかがでしょうか。

「中小企業家しんぶん」 2016年 4月 25日号より