企業研修は地域の「共育」運動 研修の経験を生徒に伝える

徳島同友会 新任教員の初任者研修 (2)

 実際に体験した感想や研修後授業で生かされた事例を紹介します。

 2015年度は163名の初任教員が企業等研修を受けました。徳島県教育委員会が行う企業等研修は徳島県内の企業における職業体験を通して、学校とは異なる企業の仕事についての理解を深め、キャリア教育や進路指導などの指導に生かせるよう、実践的指導力の向上を図ることを目的としています。受入企業では、社員と同じ仕事を体験してもらっています。

 研修先の梨園で気温が高い夏場の2日間、梨の収穫作業や梨狩りに来たお客様対応を実際に体験した受講者は「梨を作る人の思いはわれわれ教員と同じで、愛情をかけるほど、お客様の笑顔を見た時や収穫した時の喜びは大きいということがよくわかった」という心温まる感想を残しています。

 また、研修先の企業で外国人労働者と関わる経験を教員が教育活動に生かした事例もあります。

 道徳の異文化理解を考える授業では、教師が「体験した企業で多くの外国の方が働いており、はじめは言葉が通じなくても、相手を理解しようとする心が大切であると教えられた」ということを児童に伝えています。

 総合的な学習の時間(生徒の職場体験の事前学習)で自分の体験を生かした事例としては、受け入れ先の社員の方々が社員同士常に声がけを行い、コミュニケーション能力を高めるよう心がけている体験を生徒に話した教師もいました。(図1)

 このように中小企業の現場で教員の方に働く体験をしてもらい、児童・生徒に働く体験を語ってもらうことは、大勢の児童・生徒に身近な先生が中小企業で働いた体験を追体験してもらえます。児童・生徒には働くことに対して今まで以上の気付きが得られることでしょう。受入企業や教員・教育委員会等関係者と細かいやり取りを通した準備のおかげで、初年度から大きな問題は起こりませんでした。

 企業等研修は、教員と中小企業家が共に地域の人材を育てる地域の「共育」運動であるとも言えます。受入前に感じた不安は解消され、持続的な取り組みへ手応えを感じています。

徳島同友会理事 (有)小田商店 代表取締役 小田 大輔

「中小企業家しんぶん」 2016年 5月 15日号より