お客様に寄り添う社風づくり~(株)メガネマーケット 代表取締役 久賀きよ江氏(埼玉)

(株)メガネマーケット代表取締役久賀きよ江氏

 「採用と教育」をテーマに各社の取り組みを紹介する連載の第7回。今回は、埼玉県と千葉県を中心に眼鏡の販売を行う(株)メガネマーケット代表取締役の久賀きよ江氏(埼玉同友会会員)に、社員の成長を促す職場づくりについて聞きました。

採用と教育は一環として

 バブル崩壊直後に脱サラして起業しました。事業の拡大を中心に考えていたため、社員教育もおざなりで経営が困難になりました。「経営の勉強がしたい」と同友会には2000年に入会し、その翌年、共同求人委員長に「多店舗展開するのであれば新卒採用をするべき」と誘われ合同企業説明会に参加し、15年間継続しています。

 重要なのは採用と教育は一環した取り組みであることです。全国的にも合同企業説明会の企業数が増え、学生数が減少している傾向だと思います。採用できない時期も受け入れながら長い目を持って採用活動に取り組んでほしいです。刹那的な採用活動ではなく、教育の段階から学校と企業が連携して人とのつながりや地域で働く人を残すという考え方こそ大切です。

「気づきと考える力」を養う

 共同求人への継続した活動の中で、社員の教育環境は時代によって異なることもわかりました。企業内での教育方法も時代に合わせて変えていく必要があります。

 この間の新入社員には「気づきと考える力」が弱まっていると感じます。そのため、当社は3年前からマニュアルとルーチンワークをいっさい廃止し、入社1年目は特定の仕事を与えず「お客さまにとって喜ばしい環境をつくること」だけを考え自主的に動いてもらうことにしました。

 お客さまが重そうな荷物を持っていたらすぐ駆け寄って運ぶことなどひとつひとつの対応を先輩から学びつつ、自分で判断し行動に結びつけています。お客さまから感謝の言葉をもらえるようになると、どんどん気づく力が成長していきます。技術的・専門的な知識はその後に教えても問題ありません。しかし結果的には喜んでもらえるために技術、知識も自主的に習得していきますので成長が早いです。

社会への使命感を促す仕事づくり

 新たに始めた取り組みがこどもの眼鏡のみを取り扱う専門店「こども眼鏡館」です。子どもにとって眼鏡は形がおしゃれじゃないことを理由にいじめの対象になることがあります。そうすると、目の治療のために必要な眼鏡に対して嫌悪感やトラウマをもってしまうのです。実験的に始めた「こども眼鏡館」でしたが、地域の子どもたちとのつながりと「その子の一生を左右する」という責任感から社員のなかに社会への使命感が育まれています。経営者として、成長のための仕事づくりの重要性を感じました。

 自社の経営理念「豊かで明るい快適生活の提案で地域とともに歩み、喜びを共有する文化的企業を目指します」は社員と一緒につくりました。新卒で入社した社員が全社員の半分以上になり、この理念が浸透しているように感じます。徹底してお客さまに寄り添う社風は私が求めてきたものですが、社員が築いてくれていると実感しています。

(株)メガネマーケット【会社概要】

設立:1991年
資本金:1,000万円
従業員数:31名
事業内容:眼鏡類、コンタクト、補聴器の販売
URL:http://www.megane-market2.com/

「中小企業家しんぶん」 2016年 10月 5日号より