【2016年度共同求人活動から】共同求人活動で地域の未来を拓こう

採用と教育を一体として

 昨年、大幅に変更された就職・採用期間は本年2カ月の前倒しとなり、2年連続のスケジュール変更となりました。採用難・人材不足が大きな経営課題となっている中、各同友会で取り組まれた2016年度の共同求人活動の特徴を振り返ります。

求人・就職活動の動向

 2016年10月の有効求人倍率は1・40倍で昨年同時期の1・24倍を大きく上回り、91年8月以来、25年2カ月ぶりの高水準となっています。今後65歳以上の人口が増加する一方で、15歳から64歳までの生産年齢人口は大幅に減少していくと推計されており、企業の求人数が増える一方、求職者数が減ったことが上昇につながったと考えられます。

 2016年3月に大学を卒業した学生の就職率は74・7%と6年連続で上昇し、前年度より2・1ポイント上昇しました。大学卒業者約56万人のうち、「正規の職員等でない者」「一時的な仕事に就いた者」および「進学も就職もしていない者」を合算すると7万8000人。これらの安定的な雇用に就いていない者の卒業者に占める割合は、13・9%で昨年より2・2ポイント低下しましたが、まだまだ高い水準といえます。(文部科学省「平成28年度学校基本調査(速報値)」より)。

 Jobway参加企業は1174社(前年比109・3%)になり、5年連続増加、各同友会が開催した合同企業説明会の参加企業数ものべ2994社(同112・9%)と増加傾向にあります。

 一方、Jobway登録学生数は1万1446名(同77・6%)、合同企業説明会の来場学生数はのべ7148名(93・8%)となり、登録学生数、来場学生数はともに減少しています。

若者雇用促進法への対応

 2016年3月1日から「若者雇用促進法」に基づいて、新卒者の募集を行う企業に対し、就職活動中の学生が求めた場合、企業に職場情報の提供を義務付ける制度がスタートしました。近年、就職後間もなく離職するケースが多く、雇用のミスマッチが社会問題となっている背景があります。

 9月9日に行われた中同協共同求人委員会ではこの法律について研究課題として取り上げ、各地で周知徹底していくことを確認しました。

 採用難が続く中、今後若者に選ばれる企業づくりへの取り組みがますます重要となっています。

ますます進む学校との連携

 各同友会では、共同求人活動の理念を会内外に広めるためにさまざまな活動が展開されました。

 多くの同友会では、学生に「働くこと」の意味や中小企業の役割・魅力を伝える活動が継続的に取り組まれています。出前講座やインターンシップ、経営者の講師派遣、学内企業ガイダンスの協力など学生が直接経営者と触れる機会や現場を実際に見ることで職業観・勤労観を育む一助となっています。また、大学との連携協定の動きも加速しています。地域に若者を残し、地域で若者を育てる同友会の活動は、地域からの期待も年々高まっていると言えます。

 また、大学だけでなく高校との連携も始まっています。宮城同友会では2009年から高校生を対象にした「就職ガイダンス」を実施しています。採用を目的するのではなく、「業種・業界」の切り口から職業観や勤労観を伝える場にしているのが特徴です。今年は引率の教員も含め900名を超える参加者が集まりました。

 大分同友会では、高校の教員との意見交換会を開催し、教員に中小企業の魅力を伝え、大分で若者が働きたいと思える風土を一緒につくっていくことに取り組んでいます。

採用と教育を一体として

 昨年に引き続き、中同協では共同求人委員会と社員教育委員会を合同で開催し、広島同友会求人社員教育委員長の川中英章氏が「広島同友会の活動と共同求人と社員教育を一緒に取り組むことの意義」と題して実践報告を行いました。共同求人活動と社員教育活動を経営指針の実践の場として一連のものとして捉え、強い体質の企業づくりをめざす活動を進めていくことを確認しました。

 また、前日には共同求人委員会と社員教育委員会が文部科学省、厚生労働省、経済産業省と「キャリア教育」をテーマに懇談会を行いました。地方で若者が減っていく中、各地域に若者を残し、育てていくことが重要であり、学生が職業選択をする上でキャリア教育の必要性は高まっています。懇談を通して同友会としてのキャリア教育支援や採用活動の取り組みを発展させていく課題も明らかになりました。

 11月には2003年に発刊され、これまで改訂を重ねてきた『共同求人活動のすすめ』に社員教育活動の内容を盛り込み、あらたに『共同求人・社員教育活動のすすめ』としてまとめました。

人を生かす経営の総合実践を

 11月17~18日に千葉で開催された第5回人を生かす経営全国交流会には42同友会・中同協から437名が参加。「人を生かす経営が地域の未来をひらく~10年ビジョンを持ち、労使見解の実践を~」をテーマに学び合いました。

 2日目の各委員長の行動提起で小暮恭一・中同協共同求人委員長は「共同求人から見た人を生かす経営とは同友会の理念であるよい会社づくりです。合同企業説明会に参加する学生数は大幅に減っていく中、インターンシップや学内の講義、職業ガイダンスなどさまざまな場所で行ってきた中小企業や仕事を『知らせる』活動をいかに展開していくかが重要になります」と提起しました。

 人口減少が進み、人材不足が問題となっている今、地域づくりが重要な課題です。若者が暮らし、育つことができる地域をつくるのは中小企業にしかできないことです。新しい仕事をつくり、雇用を創出することが地域経済の発展にもつながります。共同求人は人を育て、企業を育て、地域をつくる運動です。参加企業の輪を全国に広げ、地域と中小企業の未来を切り拓いていきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2016年 12月 25日号より