個人消費が低迷するのは何故か

労働生産性などの数字には注意が必要

 2016年12月の実質消費支出は、前年同月比0・3%減と10カ月連続で減少しました。

 日経新聞は、個人消費がパッとしない理由を挙げ、ひとつには「大企業と中小企業の賃金格差の拡大」をクローズアップしています(2017年1月27日、「大機小機」日本経済新聞)。

 1人当たりの付加価値である労働生産性は、大企業・製造業では2012年の1140万円から2015年には1307万円に増加しましたが、中小企業・製造業では516万円から549万円に増えたにとどまります。

 つまり、生産性格差は624万円から758万円に拡大し、賃金格差も広がりました。非製造業も同じ。勤労者数の7割が中小企業ですから、個人消費が伸びないはずです。何度となく言われた、中小企業の生産性向上が焦点になっています。

 しかし、中小企業の生産性は低いと言われますが、本当にそうでしょうか。親企業のとんでもないコストダウンの要求に応える中小企業が存在してはじめて、日本の大企業は成り立ってきました。実際は、下請企業ががんばって生産性の向上に励んでも、それは納品価格の下落で相殺されてしまう。だから、付加価値で見るかぎり、中小企業の生産性は低いままに押し込められてきたのです。

 例えば、トヨタの下請企業の調査によれば、2007年度と2013年度の年売上高を比較したところ、2007年度を下回る「減収」企業比率がいずれも約7割にのぼるなど、多くの企業が依然としてリーマン・ショック前の2007年度の水準を回復していないことが分かります。トヨタが連続で最高益を更新する一方、下請企業はリーマン・ショックの傷も癒えない企業が7割も存在するという現実があるのです。

 「大機小機」は、個人消費が低迷している理由として社会保険料負担が消費を抑えていることも挙げています。2012年度と2015年度を比べると、雇用者報酬は10・3兆円増加したものの、可処分所得は4・3兆円しか増えていません。可処分所得の伸びを抑えたのは税と社会保障の負担です。所得税など負担が3・1兆円増えた以上に、社会保険料などの負担が5・3兆円増加したのです。 高齢化に伴う「将来」の負担を懸念して消費が萎縮しているというよりも、着々と増加する「現在」の社会保険料負担が可処分所得を圧迫し、消費を抑えているのです。

 「大機小機」は、解決策として社会保障の効率化を挙げていますが、少なくとも国会でもっと論議すべきです。そこでは国民への還元率などを検討しなければいけません。消費回復ためには、減税を含む経済政策が必要になってくるでしょう。

 雇用者報酬には給料以外に公的保険の企業負担分も含まれていることをお忘れなく。社会保険料負担が消費を抑えている現実を直視しなければなりません。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2017年 2月 15日号より