賃上げと社会保険等負担増

 付加価値にしめる労働分配率が78%以上の中小企業がなぜ賃上げするのでしょうか。DORの2017年1~3月調査オプションで賃上げについて聞いた結果によれば、885社回答で賃上げ実施または予定している企業が73.3%であり(15年調査57.8%から増加)、そのうち1~3%賃上げが71.5%でした。賃上げの理由を見てみると1番目が「従業員の意欲向上」で77.2%。2番目が「従業員の生活保障」43%で、そして3番目に中小企業の最大課題として挙げられる人手不足に関わる、「従業員の定着」が42%、「採用のための賃上げ」は17.6%に過ぎません。消費税8%への引き上げにより、賃金上昇より物価が高くなり、生活が苦しくなりました。その生活を保障するための賃上げということで、社員を大切にする企業努力が伺えます。

 賃上げによる経営圧迫には、人件費増と同時に社会保険料の企業負担増があります。企業が負担している給料にかかる費用を(表)で合計してみました。1947年ノ3.6%の半分負担から2000年に介護保険導入も加わった健康保険料と厚生年金が徐々に引き上げられてきています。労働保険関係を加えると、2017年3月からで(65歳未満)=健康保険ガ5.83%<2017年の健康保険料率10.00%(都道府県でことなり、最低富山の9.80%から佐賀の10.47%の間で)+介護保険料率1.65%を折半>+厚生年金保険料9.15%(18.3%を折半)+雇用保険料は今年から3年間0.1引き下げで本人0.3%、企業0.6%+労働災害保険料率本人ゼロ、企業0.3%+子ども・子育て拠出金0.23%(※介護保険は40歳~65歳の雇用者が対象、労働災害保険料率は、業種で違い2015年0.25%~8.8%と大きく差があります)の合計で16.11%を占めています。これに給料を2%賃上げすれば、中小企業の平均賃金は厚生労働省の2014年賃金構造基本統計で年収が343万円ですから賃上げ6.8万円、社会保険等でさらに1人当り1万954円の企業負担が増えることになります。

「中小企業家しんぶん」 2017年 4月 25日号より