エネルギーの「店じまい」をどうするか

原発廃炉や油田閉鎖のコストを考える

 日立製作所が浜岡原子力発電所(中部電力)の廃炉事業に参画することが明らかになりました(「日本経済新聞」電子版2017年5月30日)。日本は原発の運転期間が原則40年となり、ドイツは脱原発に邁進し、日欧で廃炉ビジネスが進展しそうです。日欧は人口減や省エネの伸張でエネルギー需要が増えることが見込みにくく、エネルギーの「店じまい」が1大ビジネスになりそうです。

 一方、米国では、大事故を起こしたスリーマイル島原子力発電所の閉鎖が決定しました(「日本経済新聞」電子版2017年5月31日)。背景には、コストが安いシェールガスを使う火力発電所に押され、先進国では原発の競争力が低下しています。

 日本では1970~80年代に運転を始めた原発の廃炉がこれから本格化します。電力各社が引当金として計上してきたり、今後の費用として見積もったりしている分をあわせると3兆円規模に。新設原発が期待できない日本では、プラント大手などが新たな商機として期待を寄せます。

 ドイツに続き、スイスも5月、国民投票で脱原発を決めました。ドイツの研究機関などが先端の廃炉技術を集め、世界への技術の輸出を狙っているとのこと。

 また、英国の「希望の星」と呼ばれた北海油田ですが、近年は生産量が減り続け、10年で半減しました。英国では海底に固定したプラットホームなどが250以上あり、パイプラインは3000、油井は5000にのぼります。海洋の生態系に悪影響を与えないように閉鎖する義務があります。

 翻って、欧州の業界団体ソーラーパワー・ヨーロッパによると、2016年の世界の太陽光発電設備の新規導入量は7660万キロワットで前年比で5割増となり過去最高を更新しました。太陽光バブルの崩壊で市場が伸び悩んだ2011~2014年は過去の話になりつつあります。

 国際再生可能エネルギー機関によると、太陽光の運転終了までトータルでみた発電コストは、2016年の平均で1キロワット時あたり10セント(11・1円)を割り込んでいます。再生エネルギーは地域によっては、石炭火力と競争できるレベルまで価格が低下しています。

 かつて「固定価格買取制度(FIT)で過度に甘やかされた」と批判されてきた再生エネルギーは自立し、オークションなど市場原理に委ねるのが世界の潮流になってきました。

 しかし、再生エネルギーの「店じまい」も考える必要があります。環境省の推計によると、太陽光パネルの寿命を25年とした場合の廃棄量は2020年度に約3000トンとなる見通し。2030年度には約3万トン、2040年度には約80万トンまで急拡大します。2040年度には産業廃棄物の再処分量の6%に相当する大量の廃棄パネルが発生します。

 欧州ではメーカーにパネルの回収・リサイクルを義務付けています。日本でもガイドラインだけでなく、「義務付け」が必要となってくるでしょう。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2017年 6月 15日号より