中同協インド・スリランカ視察 第6回 実際に現地を見る重要性

(株)ティスコ運輸 代表取締役菅原 茂秋(山形)

 中同協では昨年12月10~16日にインド・スリランカ視察を行いました。視察に参加した菅原茂秋氏(山形同友会代表理事)のレポートを紹介します。視察レポートの紹介は今回で最終回となります。

 今回初めてインド・スリランカを訪問しました。インドに到着すると冗談抜きに香辛料が香り、インドに来た実感を得ました。

 デリー市内でまず感じたのは、交通事情が日本とまったく違っていることでした。道路も荒れており、運転のマナーが悪いというかルール自体が存在するのかと思うほどなんでもありのような状況でクラクションが鳴りやまない光景には驚きを隠せませんでした。

 しかしながら、こうしたエネルギッシュな方々と今後のグローバル・ボーダレス時代には共に生きていかなければならないと考えると、日本における今日的課題を考えるいい機会となりました。

 視察では、日本からインドに進出している企業2社を訪問。立ち上げの際のポイントやインドの税制、いまだ残るカースト制への人事的対応など、学ぶ点が多々ありました。また、製造業の方々を中心としたインドの経済団体との懇談では、インドは日本からの進出(投資)を強く求めていることが感じられました。インドの中小企業から20名ほどの参加があり、今後インド進出などのお手伝いをする際のつながりがわずかながら作れました。

 その後、インドの製造業を訪問。自動車部品製造業でしたが、日本の製造方式である5Sや改善を日本で学び、それを生かして現在利益を高めていました。しかしながら、1年での賃金の上昇幅が15%と驚きました。経済成長とはいえ、取引先からのコストダウン、人件費の過剰な上昇など非常にリスクが高い状況でもあると感じました。

 過去の日本もこれに近い道をたどったものとして、今後日本が果たす役割と、アジア諸国との共生のチャンスを考える機会となりました。まだまだ衣食住を支えるインフラが未整備であり、それを国が積極的に支援しています。鋤柄中同協会長(当時)の「昔の日本もインフラが整うとともに量産へとシフトした」という言葉から、これからインドが将来的に直面していく現象は、経済成長における過程の問題だけなのか深く考えさせられました。

 しかし、あと5年もするとインドは大きな変貌を遂げるとも感じました。

 スリランカの訪問は、同じ南アジアなのにインドと国民性がここまで違うのかと感じました。インドよりも進出のチャンスはあるのではないかと思うほど、税制面、人間性の面、その他の受け入れ態勢等が充実していました。

 スリランカ企業2社を訪問。2社とも日本のAOTS(海外産業人材育成協会、旧HIDA)を学んだ企業であり、日本式の生産活動で生産性を高めてみなさんがいきいきと仕事をされている姿を見て、われわれの取り組みよりも優れている部分もあるなと、素直に反省させられる部分がありました。2社はすでに、将来における大量生産、コスト競争の危機意識も考えられており、将来的には企画開発型企業を目指すというビジョンにも触れ、今後の可能性を感じる訪問となりました。

 最後に、初めて南アジアの2つの国に入り、当初イメージしていた姿とはまったく違うことにショックを受けるとともに、実際に自身の目で現地を見ることの重要性を痛感しました。今回の経験は、今後の企業活動、同友会運動に取り組むにあたり大きな学びや、幅広い視野につながるきっかけとなりました。

(終)

「中小企業家しんぶん」 2017年 7月 15日号より