労働環境改善は会社発展の土台~実践企業に学ぶ 第1回

「就業規則のガイドライン」作成プロジェクトから

 現在、政府は「働き方改革」を推進していますが、中同協経営労働委員会「就業規則のガイドイラン」作成プロジェクトでは、約2年前から「労使見解」の視点に立った労働環境改善のあり方を論議してきました。同プロジェクトでは、全国の会員の報告や企業ヒアリングなどから、労働環境改善に積極的に取り組んでいる事例に学んでいます。それらの企業に共通している点などを連載で紹介します。

1.労働環境改善の意義・メリット

 労働環境の改善には、費用がかかることが多いため、会社の業績と労働環境の改善は一見相反すると思われがちです。しかし、会員企業の実践からは労働環境の改善が会社の業績向上につながることが示されています。

 「残業を削減することで、社員は毎日の疲労感が少なくミスの減少につながった」(製造業)、「就業規則を100%守ると宣言し、労働時間短縮等に取り組むことで、社員との信頼関係が生まれ、モチベーションが高まり、労働生産性が高まった」(サービス業)などの指摘がありました。

 また労働環境の改善は、社員の定着率の向上、採用経費・教育費の削減につながります。「社員の定着が良くなった。社員が新しい社員を連れてくるようになったので、求人費用はゼロ」(サービス業)、「働く環境を整えないと、採用しても定着しない。お金と時間をかけて採用・教育するのだから、その社員が辞めたらもったいない」(製造業)などの声が聞かれました。

 労働環境を改善することにより社員の定着率が上がり、社員の意欲・質も高まることで会社の質が高まり、その結果として会社の業績がよくなっていくという好循環が生まれると言えます。

2.労働環境改善は「経営者の覚悟次第」

 それでは、労働環境改善を進めていく鍵は何でしょうか。「経営者の意識改革が重要」「経営者の覚悟次第」という指摘が多くの方に共通していました。「経営者自身が『残業が当たり前』という認識を改めることが大切」(製造業)、「『長時間働くことが美徳』という意識からまず経営者が抜け出すことが必要」(流通業)ということが、複数の方から強調されていました。

 人口減少社会の中で、中小企業にとって「採用難」が最大の課題となっている今、「自社では無理」という固定概念にとらわれず、まず経営者が「自社の労働環境を改善する」と決意することが、会社を守り発展させる出発点になる、と言えます。

「中小企業家しんぶん」 2017年 10月 5日号より