労働環境改善は会社発展の土台 実践企業に学ぶ 第2回

「就業規則のガイドライン」作成プロジェクトから

3.生産性向上の鍵は、社員の自主性・自発性の発揮

 労働環境の改善を進めるためには業務改善や仕組みづくり、IT活用、多能工化などによる生産性向上が不可欠です。

 「(1)生産管理システムによる仕事の見える化、(2)多能工化の推進、(3)職場改善委員会の設置による社員からの改善案の具体化などで残業削減に取り組んでいる」(製造業)、「自動発注の仕組みや、稼動計画が自動的にできるソフトを近々導入予定」(小売業)など、各社さまざまな工夫により生産性を高めることに注力しています。

 そして、生産性向上の鍵となるのは、社員の自主性・自発性の発揮です。「社員は『残業ありき』だと仕事が遅くなるが、残業なしだと定時で帰る前提で効率よく働いた。社員が自分たちで考えて動くようになった。それが一番大きかった」(製造業)という声が聞かれています。

 経営者が労働時間短縮などについて実行する強い意志や、ビジョン・方針を明確にする中で、また社員教育などを地道に取り組むことにより、社員が自主的に生産性向上の仕組みを考え実践する気風も生まれてくるということが、多くの方から語られていました。

4.会社や業務の見える化、情報公開・共有が重要

 生産性向上、社員の自主性・自発性の発揮にかかわって重要となるのが、会社や業務の見える化、情報公開・共有という点です。経理の公開も含めて、会社の状況をオープンにし、経営者と社員が情報を共有することが、生産性向上や社員の自主性・自発性の発揮にも欠かせないということが共通していました。

 「社内への経営内容の情報公開。毎月の売上(過去10年間)、今期の各月の売上・収支、借入金残高などを社内に掲示している」(製造業)、「休日を増やすことで、社員は生産性をアップするための工夫をします。利益も増えました。休みを取ることで稼働率を下げると経営計画通りの利益が出ない。利益を出さないと、会社は発展しない。

 そうしないと、自分たちの生活は豊かにならないと知っているからです。経営計画を共有している成果です」(製造業)などの指摘がありました。

「中小企業家しんぶん」 2017年 11月 15日号より