労働環境改善は会社発展の土台~実践企業に学ぶ 第3回

「就業規則のガイドライン」作成プロジェクトから

5.顧客との関係や事業の見直しも必要

 労働環境改善を進めるためには、顧客との関係や事業の見直しも求められます。例えば、下請け仕事では価格と納期が押し付けられ、残業が多くなり、利益率も低くなりがちです。条件に合わない仕事は、勇気をもって断るという経営者の決断や、自社の業務を明確化し、できることやできないことを明確にし、顧客の理解を得るということも重要となります。

 「完全下請けの仕事をやっていた時は、夜中まで仕事をしていた。下請けの仕事をやめてから残業が減った」(製造業)、「儲かる部門のみに集中し、『前加工、後加工はしない』など自社でできないことをホームページに明記している」(製造業)など取り組みが見られました。顧客からの無理な要望を断れるようになるために「できるだけ1社あたりの売上を減らし、顧客数を増やしてきた」(サービス業)という事例もありました。また、「不公正な取引慣行の改善が必要」(製造業)との指摘もありました。

6.同友会に参加する中で見直しが進む

 「同友会運動に参加することで労働環境の見直しが進んだ」ということも多くの人から聞かれました。「経営指針成文化セミナーに参加する中で経営姿勢の見直しを迫られた」(サービス業)、「共同求人に参加する中で、就業規則などの整備を迫られた」(小売業)、「社員研修に経営者が参加し、他社の社員の声を聞くことで、『うちの社員も声には出さないけど、こう思っているのでは』と気づいた」(卸売業)という経験が聞かれました。

7.労働環境改善は総合的課題

 以上見てきたとおり、労働環境改善は単に人事面の課題だけではなく、事業領域の見直しや社員教育、経営環境改善なども含めた総合的な課題でもあり、経営指針に位置づけ労使が力を合わせて取り組んでいくことが重要であるということが多くの実践事例から確認されました。

 会員企業の実践に学び、「労使見解」の視点に立った労働環境改善の取り組みが全国に広がることが期待されます。

(終)

「中小企業家しんぶん」 2017年 12月 15日号より