共同求人活動で地域の未来を切り拓こう~採用と教育を一体として~

2017年度共同求人活動から

 有効求人倍率は依然上昇傾向にあり、中小企業にとって採用難・人材不足が大きな経営課題となっています。そのような中、各同友会で取り組まれた2017年度の共同求人活動の特徴を振り返ります。

求人・就職活動の動向

 2017年10月の有効求人倍率は1・55倍で昨年同時期より0・15ポイント上昇し、高度経済成長期の1974年以来、43年9カ月ぶりの水準となりました。リクルートワークス研究所の大卒求人倍率調査では、大卒求人倍率は1・78倍、従業員規模別に見ると、従業員300名未満の企業では6・45倍となっており、中小企業にとって厳しい状況が伺えます。

 2017年3月に大学を卒業した学生の就職率は76・1%と7年連続で上昇し、前年度より1・4ポイント上昇しました。大学卒業者約57万人のうち、「正規の職員等でない者」「一時的な仕事に就いた者」および「進学も就職もしていない者」を合算すると約7万2000人。これらの安定的な雇用に就いていない者の卒業者に占める割合は、12・6%で昨年より1・3ポイント低下しましたが、まだまだ高い水準といえます。(文部科学省「平成29年度学校基本調査(速報値)」より)。

 Jobway参加企業は1254社(前年比106・8%)で6年連続の増加となりましたが、各同友会が開催した合同企業説明会の参加企業数はのべ2743社(同91・6%)と減少しました。開催回数の減少や学内企業ガイダンスへのシフトなどが考えられます。

 一方、Jobway登録学生数は6591名(同57・6%)、合同企業説明会の来場学生数はのべ6138名(同85・9%)となり、登録学生数、来場学生数ともに2011年をピークに減少に歯止めがかかりません。

若者雇用促進法など法令への対応

 昨年に引き続き、2015年10月1日から順次施行された「若者雇用促進法」や2018年度卒に適用される職業安定法の一部改正について中同協共同求人委員会で研究課題として取り上げ、法律に則り採用活動を進めていくことを確認しました。それに伴い、2019Jobwayではチェック機能を設け、登録への制限を行うことも確認しました。採用難が続く中、今後若者に選ばれる企業づくりへの取り組みはますます重要になります。

広がりをみせる教育機関との連携

 各同友会では、これまで以上に教育機関との連携が進みました。多くの同友会では、学生に「働くこと」の意味や中小企業の役割・魅力を伝える活動が継続的に取り組まれ、出前講座やインターンシップ、経営者の講師派遣、学内企業ガイダンスの協力など学生が直接経営者と触れる機会や現場を実際に見ることで職業観・勤労観を育む一助となっています。また、大学との連携協定の動きもさらに活発になりました。地域に若者を残し、地域で若者を育てる同友会の活動は、地域からの期待をますます高めていると言えます。

 宮城同友会では2015年7月に連携協定を締結した東北工業大学と「中小企業と地域創生論」(全15講座・単位認定有り)を開講しました。開講の背景には、学生が在学中に地元企業の役割を知る機会が少ない、業種・業界研究があいまいなまま進路選択が行われ、ミスマッチが生まれ、早期退職につながっているなどの課題がありました。経営者自らが教壇に立ち、中小企業の役割や地域の企業の魅力を伝えることに取り組んでいます。

 山形同友会は、山形大学との連携で低学年(主に1年生)を対象にした短期インターンシップを行っています。職業観の醸成、学習意欲を早期から高め、知名度や企業規模などだけで進路決定しないよう視野を広げることなどを目的に実施されており、文部科学省のインターンシップ好事例集にも選ばれています。

採用と教育を一体として~地域づくりも視野に

 中同協では第3回目となる共同求人委員会と社員教育委員会の合同委員会を9月7日に開催しました。「真の人を生かす経営の実践とは」と題し、小暮恭一・中同協共同求人委員長と梶谷俊介・中同協社員教育委員長の対談で問題提起を行いました。人を生かす経営の実践とは、対等な労使関係で育ちあい、成長すること。対等な労使関係とは、経営指針のもとに労働者の社内の規則や労働条件の定めである就業規則があることが前提であり、その実践の主体者は経営者と社員です。採用し、共に育つという共同求人と社員教育を実践することで本質に気づくことができると提起しました。

 12月7~8日に島根で開催された2017共同求人・社員教育活動全国交流会には35同友会・中同協から257名が参加。「地域で若者を育て、地域に若者を残す~持続可能な地域と企業のために~」をテーマに学びあいました。

 小暮恭一・中同協共同求人委員長は「この交流会で社員の成長と企業の成長が地域の成長につながることを確認しました。社員によい会社だと言ってもらえる会社にすること、地域住民によい場所だと言われる地域にすることをめざしましょう。その活動こそが共同求人であり社員教育活動です」と2日間のまとめを行いました。

 人口減少が進み、人材不足が問題となっている今、地域づくりが重要な課題です。若者が暮らし、育つことができる地域をつくるのは中小企業にしかできないことです。新しい仕事をつくり、雇用を創出することが地域経済の発展にもつながります。共同求人は人を育て、企業を育て、地域をつくる運動です。参加企業の輪を全国に広げ、地域と中小企業の未来を切り拓いていきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2017年 12月 25日号より