社員の成長と高い定着率を裏付ける仕組みづくりー(株)ヒロハマ 代表取締役会長 広浜 泰久氏(千葉)

一人ひとりの素晴らしさの最大限発揮

 「採用と教育」をテーマに各社の取り組みを紹介している本企画。今回は特別編として、中同協企業環境研究センターで実施した特別調査「採用と社員教育」の一環として企業ヒアリングした内容から紹介します。特別編3回目は(株)ヒロハマ代表取締役会長の広浜泰久氏(中同協会長)に社内での取り組みについて聞きました。

 人手不足、人材不足が社会問題となっているなか、(株)ヒロハマでの新卒社員の離職者はここ10年間出ていないそうです。その秘訣を中同協会長でもある(株)ヒロハマ会長の広浜泰久氏に社員の採用、キャリア支援、人事管理制度などについてうかがいました。

キャリア支援と教育プログラムの連動

 (株)ヒロハマでは、毎年の共同求人を中心とした採用活動に加え、地元の会社説明会や近隣の大学で開催されている会社説明会にも参加しています。2016年度は30名以上の入社試験の受験者がありました。その中から採用した3名の新卒社員たちは将来の会社を担う大切な人材です。

 また、新入社員には社会人としての基礎知識の習得を目的とした入社前の通信教育、入社後3カ月間での製品知識に関する基礎教育などが用意されています。

 さらに、2年目社員には、入社後1年の経験を踏まえた上での生産システムの概要教育があります。そして、社員の自発的なキャリア形成に直結する通信教育や資格取得へは、全面的な支援をしています。

社員一人ひとりの能力とやる気に応える仕組みづくり

 人事管理制度は職能資格制度・賃金体系・人事考課・教育を連動させた仕組みと自己申告・面接を中心に進めています。人事考課は社員の各等級に応じた「職能資格要件表」と連動した公平な評価を行っており、等級ごとに異なる具体的な着眼点を踏まえ、能力評価の視点を明確にしているほか、能力評価と業績評価を分けて昇給・賞与に反映させています。

 また、社員の人事上での希望や要望を受け入れるために自己申告制度と面接制度があり、毎年2月に自己申告書を会社に提出、それに基づき、社員一人ひとりと会長、社長、所属長で面接を行います。こうした取り組みを通じて、自己成長、適材適所の社員配置、モチベーションの維持・向上が図られています。

人事理念の制定で行動指針を明確に

 (株)ヒロハマでは多様な人材を雇用することにも力を入れ、再雇用制度を導入しています。60歳の定年を過ぎた社員の多くがこの制度を利用しています。また、育児休暇や介護休暇制度を安心して利用できるよう、休暇中の連携体制や情報提供などにも工夫をこらし、社員が安心して働ける環境整備にも力を入れています。そのため、女性の結婚や出産による退職はほとんどありません。

 こうした制度や活動は、2013年に人事制度の基本的な考え方を示した「人事理念」を制定してからより進展していきました。「志(目標)を立てて取り組んでいるか」「自己成長しているか」を常に問いかける、社員の成長と高い定着率を裏付ける仕組みづくりは現在もなお進行中です。

特別調査「採用と社員教育」プロジェクト委員 日本大学工学部教授 和田 耕治

会社概要

創業:1947年
資本金:6,250万円
年商:37.6億円(2016年度実績)
社員数:133名 (2017年11月現在)
事業内容:【缶パーツ総合メーカー】18リットル缶・ペール缶等の缶用パーツ製造・販売

経営理念

1、缶パーツとその関連技術を通じて、缶の社会貢献を全面的に支援しよう
1、1人1人の持つ全ての能力を共にベストの形で花開かせよう
1、現場で現物を見て現実を把握し、原理・原則に則って対処しよう
1、お客様と我々自身に還元するために、一切のムリ・ムダ・ムラを無くして最大の利益を追求しよう
1、国内外を問わず、自らの可能性を追求し、仕事を通じて社会に貢献しよう

人事理念

1、社会人としては、常識や高い倫理観を持ち、周りの方々に絶えず感謝の気持ちを持ちつつ、職場の仲間や家庭・家族を大切にし、良き働きかけをしていきます。
1、企業人としては、勉学に励み、公正・透明で良識ある行動を自ら率先して行い、会社を通じ社会に貢献します。

「中小企業家しんぶん」 2018年 1月 5日号より