日本の「名誉ある地位」を占めるための道

2018年の年頭社説を読んで

 2018年が始まりました。毎年恒例ですが、新聞の年頭社説を読み、年の課題を占ってみます。

 まず、各社の社説のタイトルから。「来るべき民主主義 より長い時間軸の政治を」(朝日新聞)。「緊張を安定に導く対北戦略を」(読売新聞)。「論初め2018 国民国家の揺らぎ 初めから同質の国はない」(毎日新聞)。「順風の年こそ難題を片付けよう」(日本経済新聞)。「明治150年『独立自尊』を想起したい 国難乗り越えた先人に学ぼう」(産経新聞)。「明治150年と民主主義」(東京新聞)など。憲法や民主主義、明治150年の言葉が目立ちます。

 では、明治150年に当たる2018年日本の課題は何か。日本経済新聞は「来年に改元を迎えるこの時に、政府が最優先でやるべきことは何か。超高齢化社会を乗り切る社会保障と財政の見取り図をきちんと描くことにつきる」と述べます。それはその通りです。ただ、「超高齢化社会を乗り切る社会保障と財政の見取り図」は、10数年来の課題であり、今年とくに問題になっているとは思えません。

 ならば、日本の果たす役割はどこにあるのでしょうか。幕末に松平春嶽という人物がいます。旧幕府と新政府の両方で要職に就いた徳川一門の傑物です。

 「彼が説いた『国是七条』の中に『大いに言論の道をひらいて天下と共に公の政を行う』という一カ条がある。幕政を徳川家の私の政から、公の政に移行させようとした。志ある人材を身分にこだわらず登用し、大いに談論して政を行う。それが『公議』だろう」(中国新聞)。

 テロなど「怒り」や「憎悪」の感情が、世界中に渦巻いているなか、公議の風を吹かせることが、やはり日本の使命と言えるでしょう。そのためには国内政治にも、公議の風がもっと吹かなければなりません。この公議とは、新聞メディアらしい結論です。

 公議の風を吹かせることができるうえで、私たちが再認識すべきなのは、民主主義の持つ統合機能ではないでしょうか。「人間の考え方は一様ではない。階層や生い立ち、地域、年代、性差によって意見は異なる。そして違いがあるからこそ、民主主義が必要とされる。互いに異論を認め合い、最終的には全体の結論を受け入れていくプロセスに値打ちがある。トランプ流で民主主義の参加者に過剰な同質性を求めていけば、国の土台は揺らぐ一方だろう」(毎日新聞)との論です。この民主主義の持つ統合機能こそ拡充していかなければなりません。そのためには平和であることが必要です。

 「平成の終わりが、ともすれば平和の終わりになりはしないか。時代は新たな正念場に差し掛かっている、と考えます」(西日本新聞)。「ポスト平成」時代へ、次世代への遺産は平和です。平和こそが、21世紀の世界史に、日本が「名誉ある地位」を占めるための道であると信じるものです。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2018年 1月 15日号より