2017年は景況好転、18年上期は潮目変わり時の兆候あり【同友会景況調査(DOR)概要(2017年10~12月期)】

〈調査要項〉

調査時点 2017年12月1~15日
調査対象 2,367社 回答企業 947社(回答率40%)(建設158社、製造業306社、流通・商業286社、サービス業188社)
平均従業員数 (1)41.0人(役員含む・正規従業員)(2)29.6人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。好転、悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考え方で作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

主要指標は2ケタに乗せて改善

 日銀の12月短観(全国企業短期経済観測調査)によると、業況判断指数(「良い」-「悪い」割合)は大企業製造業が22→25と54半期連続改善。中小企業も景況感の改善が顕著であり、中小企業全産業の業況判断DIは9→11となり、1991年8月以来、約26年ぶりの高水準となりました。

 DOR10~12月期の業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)でも10→13と好転、業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)も9→18と大きく改善、売上高DI(「増加」-「減少」割合)10→13、経常利益DI(「増加」-「減少」割合)6→11と主要指標は2ケタに乗せて改善しました(図1・主要指標)。

 業種別の業況判断DIでは、建設業は4→13、製造業が14→15、流通・商業が8→8、サービス業が14→20と、建設業とサービス業の好転が目立ちます(図2・業種別業況判断)。また、地域経済圏別では北海道・東北が4→△3で7ポイントの悪化と唯一の悪化となりました。企業規模別では、企業規模間の差が縮まりました。

次期は主要指標が軒並み悪化の見通し

 DORの次期2018年1~3月期の業況判断DI見通しは13→8で悪化の見込みです。次々期2018年4~6月期の見通しは5を予想。業況水準DIでは18→9と9ポイントの悪化、売上高DIは次期が13→10で3ポイントの減少、経常利益DIの次期は11→8と3ポイントの減少と予想しています。業況判断DI、業況水準DI、売上高DI、経常利益DIはすべて減少方向の見通しです。

仕入価格の上昇圧力高まる

 仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合)は、前期から8ポイント上昇して32となり、資源価格の上昇などを背景に上昇圧力が強まりつつあります。売上・客単価DI(「上昇」-「下降」割合)は4ポイント上昇して10となりました。売上・客単価DIが2ケタを記録するのは2014年10~12月期以来のこと。しかしながら、仕入単価の上昇圧力は売上・客単価を上回るペースで進んでおり、仕入単価と売上・客単価の格差は前期の18から22へ4ポイント拡大しました。仕入単価の高止まりは収益に影を落としかねず、仕入価格の売上・客単価への価格転嫁が本年の課題となっています。(図3・仕入単価、売上・客単価)

生産性は上昇するが、人材不足は深刻に

 1人当たり売上高DI(「増加」-「減少」割合)および1人当たり付加価値DI(「増加」-「減少」割合)はそれぞれ6→15、5→12と2期連続でプラス側を続伸しました。1人当たり売上高DIはすべての業種で大幅な増加になりました。(図4・1人当たり売上高、付加価値)

 雇用面では、正規従業員数DI(「増加」-「減少」割合)は12→12、臨時・パート・アルバイト数DI(「増加」-「減少」割合)は6→12と「増加」側を推移し、安定した動きを示しています。

 人手の過剰感DI(「過剰」-「不足」割合)は△47→△47。DOR回答企業においては従業員数は増加していますが、それでもなお人材不足であるということになります。(図5・人手過不足感、設備過不足感)

設備不足感は高まる傾向

 10~12月期の設備投資の実施割合は34.4%と2013年1~3月期から30%以上の実施割合が4年間継続しています。設備の過不足感DI(「過剰」―「不足」割合)も緩やかな横ばい傾向が続いていましたが、△19と前期から不足感が強まる気配を見せています。(図5・人手過不足感、設備過不足感)

大きなビジョンを構想する時期

 経営上の問題点では「従業員の不足」が4割を超え、トップの指摘割合となりました。「民間需要の停滞」「同業者間の価格競争の激化」も約3割の企業で指摘されています(図6・経営上の問題点)。経営上の力点でも「人材確保」が44%→45%と高いポイントを示しています。会員からは「変化の激しい今だからこそ、10年先を見据えた経営計画が必要と痛感し、これから取り組んでまいります(奈良、スポーツウェア製造)」との声も。経営者は10年ビジョンをはじめ、今こそ大きなビジョンを構想する時期といえます。

<会員企業の経営環境の変化・課題に対する記述から>

○EV車やAI車の導入を考えていく必要がある。免許制度も変わっていくのではと考えている。予想より早くにそれが到来するようだ。(宮城、自動車教習所)

○来年は新規顧客を開拓し、自動車産業依存からの脱却をすすめる。業務を合理化し、新規開拓へ時間を使えるようにする。(愛知、機械工具販売)

○街内商店街の衰退を見ても、リアル店舗は実力を落としている。ネット販売だと全国が商圏になるので、得意商品を持ち挑戦します。(福島、写真販売)

○全社員の思考経路が新しいものを生み出す、新しい出合いをためらわないという方向へいけるような社内の風をおこす。(静岡、建設業)

「中小企業家しんぶん」 2018年 2月 5日号より