外国人労働者の受け入れをどうする?~受け入れ先進国・ドイツの光と影

 厚生労働省が6月1日発表した2017年の日本の出生数は、前年よりも3万人余り少ない94万6060人となり、過去最小を更新しました。1人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は1・43と2年連続で低下しました。

 全国で最も出生率が低い東京都は1・21と、前年の1・24からさらに大きく下がりました。大都市ほど核家族で夫婦共働きの世帯が多く、保育所に子どもを預けられないなど仕事と育児を両立しにくい環境があると新聞は嘆いて見せます(日本経済新聞、2018年6月2日)。

 先進国でも少子化が再び進んでいます。主要7カ国(G7)全体の出生数は第2次世界大戦後で初めて800万人を割りこんだとみられます(同紙)。

 ところが、育児支援策の拡充によって出生数を増やしてきた国があります。ドイツです。2016年には約20年ぶりの高水準である79万2000人まで増加。出生率も1・59と70年代前半の水準に上昇しました。1990年代半ばの1・2台前半という、東京都と同水準からV字回復しました。これには、積極的な移民受け入れも後押ししました。母親が外国人の子どもが前年比25%も増え、出生数の4分の1近い18万5000人を占めました。

 日本政府はこれらの少子化が直接の動機ではないにしても、外国人労働者の積極的な受け入れへ舵を切る方針です。新しい在留資格は就労目的を正式に認めるものになると考えられ、大きな政策転換といえます。

対象業種は、人手不足度合いの強い農業、介護、建設、宿泊、造船の5業種に限定、期間は5年間(技能実習と合わせれば最大10年間)、高い専門性が認められれば別の在留資格へ移行し、家族の帯同も可能になります。2025年ごろまでに50万人を見込むそうです。ここには、最も外国人労働者の多い製造業が造船を除いて入っていません。今後の議論となるでしょう。

 企業側からしたら、せっかく技能や日本語を修得した外国人労働者を5年で辞めさせて、新たな求人手続きや新規従業員に対する職業訓練の追加費用負担をするか、どうか。大いに疑問があります。

 重い教訓がありました。やはり、ドイツです。ドイツの移民数は全人口の約14%に当たる1200万人に上ります。その多くは、ガストアルバイターという制度に起因し、大半が低い額の年金を受給しながら、高い貧困リスクを抱えています。ガストアルバイターと呼ばれる外国人労働者は、第2世界大戦後、労働力不足を補うためにドイツが2国間協定を締結してイタリアやトルコなどから受け入れてきました。

 ガスト(客)という呼び名の通り、彼らは「労働契約満了後に帰国する」と当初は考えられていました。しかし、彼らの一部は労働契約が切れても帰国せず、家族をより豊かなドイツに呼び寄せ、ドイツ国民との溝は広がりました。

 外国人労働者を短期間だけ体よく利用した先例であるドイツ。時代は違いますが、日本はその教訓に十二分に深く学ぶ必要があります。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2018年 6月 25日号より