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「地域が一体となって『共に学ぶ』土壌づくり」を~12年目を迎えた高校生夏期課外授業~【岩手】

【変革と挑戦―各同友会の実践事例から】81

 岩手同友会の共同求人委員会と盛岡市企業立地雇用課(現経済企画課)が共催で行ってきた高校生スキルアップ夏期課外授業は、今年で12年目を迎えました。夏休みの3日間、太陽の日差しが肌に痛いほどの時期に生徒の皆さんと経営者が汗を拭き拭き「何のために生きるのか」を一生懸命、共に考えます。これまでにのべ1000名を越える高校生を送り出してきました。今年も90名の生徒と経営者22名が参加し行われました。

 1日目は「10年ビジョン ・自分の人生設計書を描く」の講義、入社2・3年目の社員の体験報告とグループ討論。2日目は10年ビジョンの作成と人間としてのマナーと将来実現したいことをテーマにした作文。そして最終日は描いた10年ビジョンと作文をもとに、「個人面接」で生徒一人ひとりの「想(おも)い」を引き出します。すべて先生役は同友会が受け持ちます。

 最初のきっかけは盛岡市立高校の3年生を対象とした「就職面接練習」の同友会への依頼でした。そこから何度も市の職員と担当教員、同友会で丁寧に目的を議論しあい「就職のためだけではなく、地域で生きること、働くことを皆が一緒に深く考える場にしよう」と確認、3者が一体となって取り組んできました。

 毎年それぞれの担当者が変わり、その度ごとに「経営者がなぜこんなに熱心にかかわるのか」と不思議がられながら、「共に育つとは」「中小企業の地域での役割とは」など、繰り返し原点に立ち戻って互いに確認し、「就職率ではなく、生徒一人ひとりの人生に向き合う」ことを一緒に語りあってきました。

 数年前からは盛岡市内の進学校からも、「ぜひ参加させたい」とたった1人の生徒を出してくる学校も出てきました。市立高校生78名とは別に、今回も6校から12名の生徒がやってきました。進学校の多くは、就職する生徒への寄り添った進路指導が難しく、履歴書や志望動機の書き方など、就職試験へ向けた知識が十分ではないケースが、しばしばあります。

 自分の将来に不安な思いで課外授業にやってくる生徒。そこで、進学校12名の生徒全員と丸テーブルに車座になって、小さい頃どんな夢があったのか、今はどんな夢を持っているのか、1つひとつたどるところからはじめていきます。生徒の、すべて受け止めてもらったことへのうれしさが目の輝きから伝わってきて、同友会会員もいつのまにか本気になって身を乗り出してしまいます。

 「あのときはお世話になりました。おかげさまでここでがんばっています」

 あるときスーパーのレジで、「10年ビジョン」の授業を12年間続けてきた信幸プロテック(株)の村松幸雄会長に声がかけられました。以前課外授業を受けた女子生徒でした。村松氏は「涙が出るほどうれしかった」と表情を崩して話します。

 「人生の最も大切な時期に、生まれた地元で、自分にこんなに真剣に向きあってくれる社長がいる」

 かけがえのない一人ひとりの命に向きあう共同求人の原点を、人が採用しづらいこの時期だからこそ、より大切にする。岩手同友会は愚直に共に学びあう土壌づくりに、これからも取り組んで行く予定です。

「中小企業家しんぶん」 2018年 9月 15日号より

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