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異形の政治家、トランプさん~大統領主導の「貿易戦争」から議会主導の「経済冷戦」へ

 DOR(同友会景況調査)の125号において、「トランプショックの可能性、高まる」とタイトルを打ちました。今まさに展開されているアメリカと中国、欧州の関税の掛け合いが焦点ですが、その先の自動車の関税を現状の2・5%から25%に引き上げることまで想定したものです。

 とはいえ、今の段階での見通しでは、(1)現時点の関税引き上げ額はアメリカ・中国のGDPの0・1%程度にすぎないこと、(2)アメリカの保護主義政策は当面11月に予定されている中間選挙対策という位置づけと考えられること、(3)アメリカとしても経済に深刻なマイナス影響は織り込んでおらず、収束が図られるとみられること、などを勘案して、重大な事態は避けられると考えられています。

ただ、政策運営が予測不能なトランプ政権だけに、貿易戦争が長期化し、世界の貿易活動に深刻なマイナス影響を与える可能性も否定できません。とにかく、トランプさんは難しい御仁(ごじん)なのです。

 自由貿易の旗振り役だったアメリカで、なぜ保護貿易への転換が生じたのか。指摘すべきは、グローバル化に対する人びとの受け止め方に変化が生じているということです。少し前まで、貿易や投資による世界経済の一体化は、すべての人々にとって望ましいものと考えられてきましたし、今でも完全に否定されたわけではありません。

 しかし、グローバル化の恩恵をより多く受ける層と恩恵をほとんど感じない層の分断を生み出しました。この四半世紀で所得が増えなかったのは、先進国の平均労働者なのです。問題は、こうした偏りを是正する仕組みが存在していないということです。世界経済は一体化したが、政治は国家単位のままだからです。そこで、グローバル化による不利益を意識する層は、国家を動かして事態の解決を図ろうとします。そこに、保護貿易を唱えるトランプが大統領に選ばれた理由の一端があります。考えようによっては、歴史の必然だったとも言えます(柴山桂太「米中欧の『調停者』をめざせ」Voice9月号)。

 9月にはさらに米国は2000億ドル相当、中国は600億ドル相当の輸入品に追加関税を課す構えのようです。実施すれば、1~2カ月で貿易戦争の実感が消費者にもでてくるそうです。

 貿易戦争は日々激しさを増しています。注目すべきは、事態がトランプ大統領主導の「貿易戦争」から議会主導の「経済冷戦」へと深刻化していることです。8月13日にトランプ大統領が署名した「国防権限法2019」。これは米国議会の超党派によるコンセンサスで、現在のワシントンの深刻な対中警戒感の高まりを反映したものです。中国の構造的懸念を念頭に、貿易以外の分野も広く規制します。議会の原案に対してトランプ政権はむしろ緩和のための調整を行っています。日本企業にも影響が及ぶ可能性があります(細川昌彦「米中は『貿易戦争』から『経済冷戦』へ」日経ビジネス・オンライン)。

 今年の9月15日でリーマンショックから10年。急激な環境の変化は願い下げなのです、が。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2018年 9月 15日号より

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